質問<2174>2005/1/24
from=虎丸
「数列を用いた不等式の証明」


次の問が分からないのでお願いします。
1.nを自然数とする時、次の不等式が成り立つことを証明せよ。
 (1)1+1/2+1/3+1/4+・・・+1/n>2n/(n+1) (n≧2)
  (2)n!>2^(n-1) (n≧3)
  (3)(1+h)^n>1+nh (h>0,n≧2)

★希望★完全解答★

お便り2005/2/2
from=KINO


基本的に数学的帰納法を用います。
1.(1) 
<第1段>
1+1/2 > 1+1/3 = 4/3 = 2×2/(2+1) より,
n=2 のとき示すべき不等式が成り立つことがわかります。

<第2段>
2以上のある自然数 k に対し,
1+1/2+1/3+1/4+...+1/k > 2k/(k+1)
が成り立ったと仮定します。この両辺に 1/(k+1) を加えると,
1+1/2+1/3+1/4+...+1/k+1/(k+1) > (2k+1)/(k+1).
この右辺が 2(k+1)/(k+2) 以上であることを示せば,n=k+1 に対し
示すべき不等式が成り立つことになります。
それでは,
(2k+1)/(k+1)≧2(k+1)/(k+2)
であることを示しましょう。
(左辺)-(右辺)≧0 を証明します。通分して計算すると
(2k+1)/(k+1)-2(k+1)/(k+2) = {(2k+1)(k+2)-2(k+1)^2}/(k+1)(k+2)
 = k/(k+1)(k+2)>0.
これで,「ある k≧2 に対して不等式が成り立てば,必ず k+1 に対しても
不等式が成り立つ」ことが示されました。

初めに示したことにより,n=2 のとき不等式は成り立ちますから,今示した
ことから n=2+1=3 のときも成り立つことがわかります。
そうすると n=3+1=4 のときにも成り立ち,
このことからさらに n=4+1=5 のときも成り立つこともわかります。
このように考えると,2以上の全ての自然数 n に対して不等式が成り立つこと
がわかります。
これで証明できました。[証明終わり]

このような議論の仕方を,「数学的帰納法」といいます。

1.(2) n=3 のとき,3!=6 > 4=2^2=2^(3-1) なので,n=3 のとき示すべき不等式
は成立する。
次に,ある自然数 k≧3 に対し,n=k とした不等式 k! > 2^(k-1) が成り立つと
仮定する。
この両辺に k+1 をかけると,k+1≧4=2^2 であるから,
(k+1)! = (k+1)×k! > (k+1)×2^(k-1) > 2^2×2^(k-1)=2^(k+1)
 > 2^k=2^{(k+1)-1}.
よって,このとき n=k+1 とおいた不等式 (k+1)! > 2^k も成り立つ。
したがって,
数学的帰納法により全ての自然数 n≧3 に対し示すべき不等式が成立する。
[証明終わり]

1.(3) 2項定理を知っていれば,n≧2 のとき
(1+h)^n = 1+nh+...+h^n
であり,h>0 なので右辺の 1+nh より後の項はすべて正の数。ゆえに
1+nh+...+h^n > 1+nh.
これらより,(1+h)^n > 1+nh が成り立つことが示されます。

もちろん数学的帰納法でも出来ます。
n=2 については,(1+h)^2 = 1+2h+h^2 > 1+2h より,成り立つ。
n=k≧2 で成り立つと仮定すると,(1+h)^k > 1+kh.
この両辺に 1+h をかければ
(1+h)^(k+1) > (1+h)(1+kh) = 1+(k+1)h+kh^2.
kh^2 > 0 であるから,
1+(k+1)h+kh^2 > 1+(k+1)h.
よって,(1+h)^(k+1) >  1+(k+1)h,すなわち n=k+1 のときにも成り立つ。
ゆえに数学的帰納法により,
全ての自然数 n≧2 に対し示すべき不等式が成り立つことが証明された。
[証明終わり]