質問<520>2001/6/20
from=Kanjist
「3項間漸化式の虚数解」


はじめましてKanjistと申します。
3項間漸化式は
特性方程式
a(n+2)-βa(n+1)=α{a(n+1)-βa(n)}
a(n+2)-αa(n+1)=β{a(n+1)-αa(n)}
によってα≠βのとき
a(n)=[{a(2)-βa(1)}α^(n-1)-{a(2)-αa(1)}β^(n-1)]/(α-β)
と一般項が求められますよね。
しかし、a(n+2)+a(n+1)+a(n)=0などのように
αやβが虚数となる場合があります。
このようなときにおいても上の「a(n)=」の解が必ず整数となることは
証明できるのでしょうか。a(n+2)-(α+β)a(n+1)+αβa(n)=0の漸化式において
a(1),a(2),α+β,αβ,はすべて整数とします。
もちろん、漸化式の構造上、{a(n)}が整数に閉じた数列なのは自明です。
しかし、僕がやった限り、あと一歩のところまでたどり着きました。
しかし、そのあと一歩が出ません。
回答よろしくお願いします。
ちなみに僕はα=x+yi,β=x-yiとして複素数の極形式変換からド・モアブル
の公式に持ち込みました。


お返事2001/6/21
from=武田


a(1)とa(2)が整数であれば、一般項a(n)も整数となります。
a(n+2)+a(n+1)+a(n)=0を変形して、
a(n+2)=-a(n+1)-a(n)より、明らかです。

ここでは、一般項からトライしてみよう。
この線形2階差分方程式(3項間漸化式のこと)の特性方程式は
ρ2 +ρ+1=0なので、
解は
  -1±i√3
ρ=────── という虚数(複素数)となる。
    2

そこで、この2つの複素数は共役複素数だから、極形式に直すと、
ρ1 =r(cosθ+isinθ)
  =cos120°+isin120°
ρ2 =r(cosθ-isinθ)
  =cos120°-isin120°

一般項は次のようになる。
a(n)=C1 ρ1 n +C2 ρ2 n 
    =C1 (cos120°n+isin120°n)+C2 (cos120°n-isin120°n)
    =(C1 +C2 )cos120°n+i(C1 -C2 )sin120°n

C1 とC2 は任意定数だから、まとめて
(C1 +C2 )=A、i(C1 -C2 )=Bとおくと、
a(n)=Acos120°n+Bsin120°n

a(1)、a(2)は整数だから、
a(1)=Acos120°+Bsin120°

      1  √3
    =-─A+──B
      2   2

例えば、A=2、B=2√3とすると、a(1)=-1+3=2(整数となる)
第2項以降も同様にして、
a(2)=Acos240°+Bsin240°

      1  √3
    =-─A-──B
      2   2

    =-1-3=-4(整数となる)a(3)=Acos360°+Bsin360°
    =2

a(4)=Acos480°+Bsin480°
    =-1+3=2

したがって、この例では、一般項は
a(n)=2・cos120°n+2√3・sin120°n
となる。
したがって、この例の数列は、
2,-4,2,2,-4,2,2,……
となる。この数列は、
a(n+2)+a(n+1)+a(n)=0となるので、
正しい例であることが分かる。
すべての項は整数となる。

A=4、B=2√3とすると、
1,-5,4,1,-5,4,1,……


お便り2001/7/1
from=Kanjist


ご回答ありがとうございます。
返事が送れて申し訳ありません。
しかし、こちらの質問も悪かったのですが、
a(n+2)+a(n+1)+a(n)=0という代表的な場合は
既に自分で証明してありました。
質問したかったのは、
a(n+2)-(α+β)a(n+1)+αβa(n)=0 (α,βは特性方程式の虚数解)
という一般的事例についてだったのです。

手順は省略いたしますが、僕は次のような結果を得ました。
α=x+yi, β=x-yiとする

a(n)=cosθn・{2xy・a(1)-y・a(2)}+sinθn・{x・a(2)-x^2・a(1)+y^2・a(1)}

分母の2iは分子から2iをくくりだすことによって消去できました。
しかし、sinθn, cosθn, およびxは分数である可能性をもち、
yは無理数である可能性があります。
ここに至って壁にぶつかったのです。

視点を変えて二項定理を用いて解いてみました。
以下n≧3とします

a(n+2)-(α+β)a(n+1)+αβa(n)=0としたとき
α=x+yi, β=x-yiとすると

      {a(2)-a(1)x}{(x+yi)^(n-1)-(x-yi)^(n-1)}+a(1)yi{(x+yi)^(n-1)+(x-yi)^(n-1)}
a(n)=―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
                                    2yi
とすると二項定理を用いて
(i)nが偶数のとき
                              n/2
(x+yi)^(n-1)-(x-yi)^(n-1)=2yi・Σ{(-1)^(k-1)・(n-1)C(2k-1)・x^(n-2k)・y^(2k-2)}
                              k=1

                           n/2
(x+yi)^(n-1)+(x-yi)^(n-1)=2Σ{(-1)^(k-1)・(n-1)C(2k-2)・x^(n-2k+1)・y^(2k-2)}
                           k=1

(ii)nが奇数のとき
                            (n-1)/2
(x+yi)^(n-1)-(x-yi)^(n-1)=2yi・Σ{(-1)^(k-1)・(n-1)C(2k-1)・x^(n-2k)・y^(2k-2)}
                              k=1

                         (n+1)/2
(x+yi)^(n-1)+(x-yi)^(n-1)=2Σ{(-1)^(k-1)・(n-1)C(2k-2)・x^(n-2k+1)・y^(2k-2)}
                           k=1

となるのでa(n)はa(1)とa(2)とxとyについての式になります。
都合上、(m)C(m+1)=0とします。
ここで上の結果を代入した後、a(1)とa(2)についてまとめると
a(1)の係数とa(2)の係数は独立して整数である必要があることがわかります。
ちなみにすべて書くのは面倒なので
a(1)の係数は

    [n+1]/2
P =   Σ{(-1)^(k-1){(n-1)C(2k-2)-(n-1)C(2k-1)}x^(n-2k+1)・y^2(k-1)}
      k=1
          [ ]はガウス記号

a(2)の係数は

    [n+1]/2
Q =  Σ{(-1)^(k-1)・(n-1)C(2k-1)・x^(n-2k)・y^2(k-1)}
     k=1

でありa(n)=P・a(1)+Q・a(2)と表されます。
しかも、yには2(k-1)という指数がついているのでyが無理数であっても
a(n)は必ず有理数になります。
しかし、結局ここで、x, yが分数であるという事実から
a(n)は有理数であるという結論までしかたどりつけませんでした。
ド・モアブルの定理よりも一歩進んで有理数であることはわかりましたが、
ここまでが限界のようです。
x=-b/2, y=√(4c-b^2)/2よりnを1から10まで代入して計算してみましたが、
結局、このbとcによってa(n)が整数であることが示されるので、
つまりは堂堂巡りです。
なぜかというとこのbとcというのは最初の漸化式のα+β, αβに相違ないから
です。
僕は下の一般項式からa(n)が整数であることを示そうとしたのですが、やはり、

      {a(2)-βa(1)}α^(n-1)-{a(2)-αa(1)}β^(n-1)
a(n)=――――――――――――――――――――――
                        α-β

という式からa(n)が整数であることを導き出すのは無意味なことのようです。
結局、「漸化式より自明」が賢明な答えですね。
長々とすみませんでした