質問<529>2001/6/25
from=どってぃ
「ハムレタスサンドイッチの定理」


形が不均一なハムとレタスとパン(1枚のみ)があります。
この3つのものを重ねて、包丁で一斬りすると、
その部分を境に全部ハムもレタスもパンもまっ二つに割れ、
その面積はハム同士、レタス同士、パン同士で
全て同じになりました。こうなる線を求めて、この定理を証明しなさい。
という問題があるのですが、どうしても分かりません。
そこで教えて頂きたく投稿しました。よろしくお願いします。


お返事2001/6/26
from=武田


私も分かりませんが、ヒントらしきものとして、
重心があります。

ハムの重心を通るように切ると2つに分かれた部分の面積は等しい。
レタスの重心も同様なので、
2つの重心を通るように切れば、問題の趣旨に合う。
しかし、問題はこれにパンが加わり、3つになると
重心が三角形を描くので、包丁で一斬りとはいかない。

※未解決問題に移しますので、どなたかアドバイス下さい。
Toshi Tokudaさんからアドバイスが届きました。
※未解決問題に移したところ、星野さんからも
アドバイスをいただきました。感謝!!


お便り2001/6/27
from=Toshi Tokuda


この問題なんですが、僕は学校で「中間値の定理」を使ってやると
聞いたのですが、やり方は忘れてしまいました。
これでは、ヒントにならないですか?


お便り2001/9/8
from=星野敏司


有名な ham sandwich theorem ですが
証明は難しいですね~。
小松あつ郎, 中岡稔, 菅原正博:
位相幾何学 I, 岩波,  p. 494 例題 4.8,
中岡稔: 不動点定理とその周辺, 岩波, p. 10 応用例 2.3
ですけれど。

内容は
三次元空間 (R^3) の中に 3 個の有界な可測集合 A_1, A_2, A_3
(ハムとレタスとサンドイッチ) が与えられたとき, A_1, A_2, A_3 の各々を
等測度に分割するような平面 P が存在する。

証明:
R^3 上にはない R^4 の点 y_0 を定める。
各 x ∈ S^3 (3 次元球面原点中心半径は 1 で考えて良い) に対し, Q_x は
y_0 を通り, 直線 Ox (原点と x とを結んだ線) に直交する R^4 の超平面
を表すものとする。
¬y_0∈R^3 だから, Q_x ≠ R^3.
そこで Q_x に関して x + y_0 と同じ側にある A_i の部分の測度を u_i(x) で表す。
この時
u_i: S^3→R, i = 1, 2, 3
は連続であるから, 「Borsuk-Ulam の対心点定理」 により,
u_i(a) = u_i(-a)
となる a ∈ S^3 が存在する。
各 x ∈ S^3 に対し, Q_x = Q_(-x) で, x + y_0 と x - y_0 は Q_x の反対側
にあるから
u_i(x) + u_i(-x) = m(A_i) (A_i の測度)
が成立する。従って特に
u_i(a) = u_i(-a)= m(A_i)/2, i = 1, 2, 3.
Q_a は R^3 と平行ではないので, Q_a と R^3 の交わりを P とすると
この P が求めるものである□

勿論一般には R^n と A_1, ... , A_n で証明出来る。

さて途中で言及した「Borsuk-Ulam の対心点定理」 はこういう内容。

任意の連続写像 f: S^n→R^n に関し x ∈ S^n が存在して f(-x) = f(x).

今の場合必要なのは n = 3 だからそれに関して説明すると
もしもそういう x ∈ S^3 が存在しないとすればそれが矛盾であることを示す。
h: D^3→S^3: (x, y, z)→(x, y, z, √(1-x^2-y^2-z^2))
D^3 = {(x, y, z): x^2 + y^2 + z^2 ≦1}
を用いて
G: D^3→S^2: (f(h(x))-f(-h(x)))/|f(h(x))-f(-h(x))|
g=G|S^2 (S^2 への制限) と置くと, g は定値写像に homotope だから
deg g = 0. ところが g(-x) = -g(x) だから deg g は奇数でなければならない。
これは矛盾である。

というわけで証明は易しくない。

レタス無しのハムサンドイッチならば,
ご指摘の通り中間値の定理だけで証明出来る。
というのは例えば xy 平面にこれをおいて, z 軸に平行な平面で
パンを二等分する平面を, x 軸との一般角 θ で parameter 表示しておき,
この平面のどちらか一方の決めた側にあるハムの体積を f(θ) で表す。
0 ≦ θ ≦ 2π と考えて良く, f(0) = f(2π) がもとの体積の 1/2 ならば
それで終り。
もしそうでなければ f(0) 又は f(2π) のどちらか一方が
もとの体積の 1/2 より大きく,
他方がもとの体積の 1/2 より小さい (f(θ)+f(2π-θ) が
ハム全体の体積で, f(θ)は正値函数だから)。 
この函数に関し中間値の定理を用いればよいわけである。