質問<1216>2003/5/17
from=早く安眠がほしい
「パイと確率。そして超球…」


{(x,y):0≦x≦1, 0≦y≦1}の正方形にm(十分大きな自然数)個の点を
無作為かつ独立に打つ。そのうち{(x,y):x^2+y^2≦1}の部分に打つ
確率を考えると、(ここでは円全体ではなく四分の一の扇型なので)
期待値がm×π/4となる。これにより、実際にコンピュータなどで
シュミレーションすると、(確率)/(m/4)からπの推定ができる。
この手の話はよく耳にすると思うのですが、これを拡張した話として
以下のようなものがあります。わからないので教えてください。
1、上記のπの推定方法を拡張して、三次元での半径1の球の体積4π/3
を推定するにはどうすればよいか?
2、さらにこれらの方法を拡張して、n次元での半径1の球の体積を推定
するにはどうすればよいか?

…おそらく 超球体積=π^(n/2) /Γ(n/2+1) を用いるのでしょうが、
これについては結果しか知らないのでよくわかりません。
この問題のおかげで安眠できません。どうかどうか教えてください。


お返事2003/5/26
from=M谷先生門下 秘路気


「パイと確率。そして超球…」
の質問させていただいたものです。
おかげさまで、
無事この問題は解決いたしました。

ポイントは
「(確率)/(m/4)からπの推定ができる」
というのを
πの推定でなく
二次元のときの超球の体積V(2)を
推定している
ということに気づくことでした。
(ちなみに
 V(n)=半径1のn次元超球体積
 で定義しています。)

二次元の話では
面積1の正方形の中の、
扇形(円の面積/4)
すなわちV(2)/2^2の
部分にプロットを打つ確率を
、
そして
三次元に拡張すれば
体積1の立方体のなかの
球の体積/8
すなわちV(3)/2^3
にプロットを打つ確率を
考えるということになります。

あるいは
一辺が2の正方形の中の
半径1の円
を考えても
確率は
円/正方形=V(2)/2^2
で、
それを拡張した
一辺が2の立方体の中の
半径1の球
を考えても
やはり確率は
球/立方体=V(3)/2^3
となります。

で、既述のどちらの方法でもよいですが、
(後に示した方法のほうがたぶん拡張を考えやすい)
これをn次元に拡張すると
確率=V(n)/2^n
となります。

何次元になっても
一回の試行は、ベルヌーイ試行だから、
二項分布
b(m,V(n)/2^n)
を考えればそれでいいということになります。
(m=プロット数)

それで
期待値=m*(V(n)/2^n)
ですから、
n次元球の超体積の体積は
シュミレーションで求めた確率を
 p とすれば
V(n)=p/(m/2^n)
で推定できることになります。

ちなみに
半径1の超球体積=π^(n/2) /Γ(n/2+1)
の式ですが、この問題を解く上では
これを知っている必要はないです。

ただ理論値としてこの値になるということを
知っていれば、
推定したときに確認できるということです。

二次元から五次元までの
超球体積をパソコンを用いて推定したところ
以下のようになりました。
左のVが理論値で、
右のEVがシュミレーションによる推定値です。

                     V            EV 
二次元       3.1415927     3.1404800 


                     V            EV 
三次元       4.1887902     4.1750400 


                     V            EV 
四次元       4.9348022     4.9337600 


                     V            EV 
五次元       5.2637890     5.3004800 


なお、理論値、
半径1の超球体積=π^(n/2) /Γ(n/2+1)
ですが、
これは漸化式
V(n)/V(n-1)
=Γ(1/2)Γ{(n+1)/2}/Γ(n/2+1)
=B(1/2,(n+1)/2)
(あるいは、V(n)/V(n-2)=2π/n )
によって求まります。

そしてこれは
質問<164>99/8/16
from=坂田「4次元的な球の体積」にある
「…加えていえば,n次元球の体積と(n+1)次元球の体積には
何か関係式はあるのでしょうか?」
の答えに対応しているように思われます。

それでは失礼いたします。