質問<214>2000/1/16
海鳴社出版の「オイラーの贈物」(吉田武著)の309ページに フィボナッチ数列の一般項が三角関数で表示されていした。 [(n-1)/2] xn=||積記号 (1+4cos(kπ/n))2乗 k=1 証明がわかりません。自分でやりたかったのですが,時間がなく 取り組めていません。ヒントをください。お待ちしています。 数学愛好者より。
お返事2000/1/17
from=武田
フィボナッチ数列の一般項が三角関数で表現できるとは質
問が来るまで知りませんでした。
早速調べてみると、
正方格子上のある量の統計力学的数え上げを行った際に出て
きた式の副産物で、数学の公式集にはまだ載っていないそう
です。関数電卓や計算機の三角関数計算の精度チェックに利
用しているようです。
また、式が少し違っていました。
[(n-1)/2]
Fn= Π {1+4cos2(kπ/n)}
k=1
なお、Π(パイ)はπの大文字で、乗積を表しています。
(ちょうど、Σ(シグマ)がσの大文字で、和を表しているのと
似ていますね。)
Πの上端の[(n-1)/2]の[ ]はガウスの記号と呼ばれている
もので、[x]とは、x以下の最大の整数を表すことになって
います。例えば、[-2.5]=-3、[3.2]=3
さて、この式が成り立つことの証明ですが、たまたま以前
の質問<1>の解答を考える(野崎先生のお便り)ときに
クンマーの因数分解というのがありまして、そこから糸口を
見つけだすことができました。
最初にフィボナッチ数列の一般項Fnの計算をして、
{(1+√5)/2}n-{(1-√5)/2}n
Fn=──────────────
√5
を求めます。次に、クンマーの因数分解を使って、
ζ=cos(2π/n)+isin(2π/n) と、
1+√5 1-√5
α=──── と β=──── より、
2 2
αn-βn
Fn=────
√5
αn-βn=(α-β)(α-ζβ)(α-ζ2β)……(α-ζn-1β)
α-β=√5
1+√5 1-√5
α-ζβ=────-{cos(2π/n)+isin(2π/n)}────
2 2
1+√5 1-√5 1-√5
=────-cos(2π/n)────-isin(2π/n)────
2 2 2
1+√5 1-√5
α-ζn-1β=────-{cos(n-1)(2π/n)+isin(n-1)(2π/n)}────
2 2
1+√5 1-√5 1-√5
=────-cos(2π-2π/n)────-isin(2π-2π/n)────
2 2 2
1+√5 1-√5 1-√5
=────-cos(2π/n)────+isin(2π/n)────
2 2 2
α-ζβとα-ζn-1βはiの前の符号が反対だけでそっくり
だから、(a-b)(a+b)=a2-b2より、
(α-ζβ)・(α-ζn-1β)
1+√5 1-√5 1-√5
={────-cos(2π/n)────}2-i2{sin(2π/n)────}2
2 2 2
6+2√5 6-2√5
=──────+2cos(2π/n)+─────{cos2(2π/n)+sin2(2π/n)}
4 4
6+2√5 6-2√5
=─────+─────+2cos(2π/n)
4 4
=3+2cos2(π/n)
=3+2{2cos2(π/n)-1}
=1+4cos2(π/n)
同様のやり方で、
(α-ζ2β)・(α-ζn-2β)
=1+4cos2(2π/n)
同様にやると、(n-1)/2個の1+4cos2(kπ/n)ができる。
なお、nが奇数の時は
(2k-1-1)/2=(k-1)個となるので良いが、
nが偶数の時は
(2k-1)/2=(k-1/2)個となり、
n/2番目が1個残ってしまう。しかし、
1+√5 1-√5
α-ζn/2β=────-{cos(n/2)(2π/n)+isin(n/2)(2π/n)}────
2 2
1+√5 1-√5 1-√5
=────-cos(π)────-isin(π)────
2 2 2
1+√5 1-√5
=────+────=1
2 2
なので、個数はガウスの記号を利用して、[(n-1)/2]とすると、
αn-βn
Fn=────
√5
=【1+4cos2(π/n)】【1+4cos2(2π/n)】
……【1+4cos2([(n-1)/2]π/n)】
[(n-1)/2]
= Π {1+4cos2(kπ/n)}
k=1
以上、苦労しましたが、クンマーの因数分解が役立ちました。