質問<2293>2005/4/15
y"+2y'+y=1/(1-x)^2 お願いします。 ★希望★完全解答★
お便り2005/4/20
from=亀田馬志
これ高校の問題じゃないでしょ?まあ、面白かったからイイんですけど(笑)。 僕自身は数学不得手な方なんで、説明おぼつかないトコがあるとは思いますが、 厳密な論理展開は他のヒトがやってくれると思います(笑)。 ただ『概要を知る』って意味では高校のヒトが一から見て行って分かり易い解説は 『視点が近い』のでできると思います。ただ『厳密性』では自信が無いんで(笑)、 細かいミスがあったらご指摘宜しくお願いします。 質問<2274>で書いてる方式の継続、ってカタチで話をさせて頂きます。 今回の微分方程式 y"+2y'+y=1/(1-x)^2 も『線形微分方程式』です。従って『微分演算子』を利用した解法で原理的には 解けます。しかしいくつか前の質問と違った特徴があります。まずその特徴を洗い 出す事から話を始めたいと思います。 まず今回の微分方程式は『2階微分方程式』です。そこでこの『2階』に話を即して 展開しますが(と言うのも、数学でよく用いられる“一般化”の方式では抽象的過 ぎて直観的に分かり辛いからです)原理的に全ての線形微分方程式にも共通の分類 があります。 まず次の微分方程式を見て下さい。 ・y"+2y'+y=0・・・・・・① ・y"+2y'+y=R(x)・・・② 今回の問題は②に即しています(R(x)はxの関数)。この形式の微分方程式を『非同 次の』微分方程式、と呼びます。対して①の様に右辺にxの関数を持たないモノを 『同次の』微分方程式と呼びます。 余談ですが、『同次』『非同次』って呼び方はピンときませんね(笑)。『日本語 としての』意味が分かりません(苦笑)。ちなみに英語では『同次=homogenius』 と言うようです。ホモジーニアス・・・『ホモの天才』・・・多分『おすぎとピーコ』 の事でしょう(笑)。『何か失ってゼロになっちゃった』んでしょうね、彼等は(笑)。 ってなワケで右辺がゼロなんでしょう、多分(笑)。 話を戻します。『非同次』の微分方程式を解くにしてもまずは『同次』の方が解け ないとハナシになりません。順々追って『非同次』に繋げて行きたいと思います。 1)同次線形微分方程式の解法: ・y"+2y'+y=0・・・① これを解くには前回の問題と同様に『微分演算子』の導入が効果的です。 ただし、パソコンの表現の問題もありますんで、d/dx=Dと言う表現に改めてみます。 同様に2階の微分はD^2と表現して、上記の微分方程式を書き換えてみます。 ・(D^2)y+2Dy+y=0 前回『全て因数分解の問題に帰結すれば良い』と書きました。拠って上式を因数分解 してみます。 ・{(D+1)^2}y=0・・・③ これで分かるのは、前回の論法に従えば、 ・y_(1)=e^(-x) ってのが『少なくとも解の一つである』って事です。実際y_(1)が①を満たしてるの を確認してみて下さい。(この微分方程式を満たす基本となる関数=解を基本解と呼 びます) しかしながら、誰が決めたんだか知らないんですが(笑)、実は『微分方程式の基本解 の個数』について次の約束事があります。 『n階微分方程式の基本解の個数はn個ある。』 つまり『基本解1個』だと2階微分方程式の解の個数としては足りないんですよ。2個 無いといけないワケです。 さて、ココで『2階微分方程式』に話を限定しますが(かつほかの階数でも考え方の 基本は変わりません)、 因数分解で考えると次の2つしかパターンが無いんです。 i)解がキチンと2つある ii)解が重解である 例えば因数分解して ・(D-a)(D-b)y=O なんかになったらコレはもうi)のパターンです。素直に基本解は ・y_(1)=e^(ax)、y_(2)=e^(bx) の二つである、と胸張って言えます(笑)。コッチは問題が無いんですが、 難しいのはii)のパターンなんです。解が一個しか見当たりません。 さて、僕も教科書当然読んでたんですが、あまり理由を『丁寧に説明』してる教科書 って無いんですよ(笑)。よって『重解』の場合、次の基本解の公式を『天下りに』 覚えるしかありません。 ・{(D-a)^n}y=0の基本解:y_(1)=e^(ax),y(2)=xe^(ax),y_(3)=(x^2)*e^(ax), ……,y_(n)={x^(n-1)}*e^(ax) のn個が基本解になります。 さて、上記のパターンを重解である③に当てはめて考えてみると、 ③の基本解:y_(1)=e^(-x)、y_(2)=xe^(-x) の二つ、となります。y_(2)の方も①を満たしてるのを確認してみて下さい。 と言うワケで『同次線形微分方程式の解法』としては以上で終了なんですが、 『数学的な解の記述』としては次の様に書く、と言った(ほとんど)お約束があります。 専門的には『線形結合』と呼ぶのですが、その意味はともかく、基本解に積分定数を 適当につけてやって足しあわした形で表記します。これを『一般解』と呼びます。 ここでは積分定数をA、Bとして ・y=Ae^(-x)+Bxe^(-x)・・・④ が①の『一般解』になります。これも①式を満たしてるのを確認してみて下さい。 2)非同次微分方程式の解き方: さて、問題の非同時微分方程式 ・y"+2y'+y=1/(1-x)^2・・・⑤ の解ですが、『同次微分方程式①の一般解』である④を考慮すると、『恐らく』次の 形をしているんじゃないか、と予想できます。(F(x)はxの関数) ・y=Ae^(-x)+Bxe^(-x)+F(x)・・・⑥ と言うのも、⑥式を微分すると ・y"+2y'+y=0+F"(x)+2F'(x)+F(x) ∴F"(x)+2F'(x)+F(x)=1/(1-x)^2 ってのが明らかだからです。まあ、当たり前ですよね。 そうすると『一体関数F(x)がどんなカタチをしてるのか?』ってのが問題となります。 ここを予想しなきゃいけない。そして競馬の予想くらい難解です(笑)。 しかし、ヒントはあります。同次微分方程式の一般解④は積分定数A、Bが『任意』で した。これを利用すると次の2つが予想出来ます。 i) F(x)は同次方程式の基本解を共有していて式④に準じたカタチをしているのでは 無いか? ii) かつ積分定数A、Bが“特殊”なカタチ(つまり“定数”ではなくってxの関数)に なってるのでは無いか? よってこの『仮定』に従ってF(x)を『捏造』してみたいと思います。また、『積分定 数A、Bが“特殊”なカタチをしている』と言う前提に従って、④を『一般解』と呼ぶ のに対してF(x)を『特殊解』と呼ぶ、としましょう。 さて、i)、ii)の仮定に基づいて『特殊解』F(x)のカタチは次のように『捏造』されます。 ・F(x)=ue^(-x)+vxe^(-x)・・・⑦ ここでuとvはそれぞれxの関数です。定数だったら④と同じになって意味が無いです からね(笑)。ここで次の微分公式(f、g、はxの関数) ・(f・g)'=f'・g+f・g' を用いて、⑦を微分してみます。 ・F'(x)=u'e^(-x)-ue^(-x)+v'xe^(-x)+ve^(-x)-vxe^(-x) ={u'e^(-x)+v'xe^(-x)}-ue^(-x)+ve^(-x)-vxe^(-x)・・・⑧ ここで次のように仮定します。 ・u'e^(-x)+v'xe^(-x)=0・・・⑨ 何故なら、これ以上微分してu"とかv"が出てきたらメンドくさいからです(笑)。 ⑨式を利用すると⑧式は次のように書き換えられます。 ・F'(x)=0-ue^(-x)+ve^(-x)-vxe^(-x) =-ue^(-x)+ve^(-x)-vxe^(-x)・・・⑧' 幾分スッキリしたようです。よってまたもや微分してみます。 ・F"(x)=-u'e^(-x)+ue^(-x)+v'e^(-x)-ve^(-x) -v'xe^(-x)-ve^(-x)+vxe^(-x)・・・⑩ 大丈夫でしょうか(笑)?見てるとアタマ痛くなってきますが(笑)、しっかり計算して 追って来て下さい。ココで⑦、⑧'、⑩を使ってF"(x)+2F'(x)+F(x)を計算してみ ます。すると、 ・F"(x)+2F'(x)+F(x)=-u'e^(-x)+v'e^(-x)-v'xe^(-x) ∴F"(x)+2F'(x)+F(x)=1/(1-x)^2なので、 ・-u'e^(-x)+v'e^(-x)-v'xe^(-x)=1/(1-x)^2・・・⑪ 幾分スッキリしたでしょ(笑)?そうすると、今uとvのカタチが分かれば特殊解F(x)の カタチが分かる、とアト一歩のトコまで来ています。条件は今求めた⑪が1つ、 そして先ほど設定した⑨の二つがカギとなります。 見やすい様に2つ並べて書いてみましょうか? ・u'e^(-x)+v'xe^(-x)=0・・・⑨ ・-u'e^(-x)+v'e^(-x)-v'xe^(-x)=1/(1-x)^2・・・⑪ これは『u'とv'についての連立方程式』ですね。よってワンパターンですけど行列化 してみます。 ( e^(-x) xe^(-x) )(u') ( 0 ) ・(-e^(-x) e^(-x)-xe^(-x))(v')=(1/(1-x)^2)…⑫ 『クラメールの公式』を用いてu'、v'を求めます。(ちなみにこのトキの行列式detA の一般式には名前がついていて、特に“ロンスキアン”とか“ロンスキ行列式”等と 呼ばれています。重積分の積分変数の置換等にも顔を出してきます。) ⑫を解くと、u'とv'は次のようになります。 ・u'={xe^(x)}/{(1-x)^2} ・v'={e^(x)}/{(1-x)^2} よってu、vは ・u=∫{xe^(x)}/{(1-x)^2}dx・・・⑬ ・v=∫{e^(x)}/{(1-x)^2}dx・・・⑭ となり、特殊解F(x)のカタチが求まります。 3)部分積分の一つのやり方: とまあ、ここまでは『高校生向け』の『優しい微分方程式の解き方』の解説で した(笑)。まあ、コレでもハッキリ言って大学での『一学期分』の分量はあるだろう んで理解するのは大変でしょうけど(笑)。しかしながらなるべく平易に、ってのを心 がけたつもりです。 さて、質問者のみなみさんは予想するにここまで既にたどり着いてるんだと思います。 が。問題は単純に⑬、⑭が積分出来ない、って事じゃないでしょうか? 確かにコレはマトモには積分出来ないんですよね。よって2つ方法論を考えてみました。 i)諦める(笑) 別にF(x)のグラフを書け、って言ってるワケでは無いんで、u、vの『具体的な』カタチ を求める必要等無い、って考えです。 ここで解は一般解+特殊解になるので、 ・y=Ae^(-x)+Bxe^(-x)+ue^(-x)+vxe^(-x) ってのは明らかです。よって、 ・y=Ae^(-x)+Bxe^(-x)+e^(-x)*∫{xe^(x)}/{(1-x)^2}dx +xe^(-x)*∫{e^(x)}/{(1-x)^2}dx と書いて開き直ってしまう(笑)。まあ、u、vの微分は既に分かってるので、微分方程 式の解としては問題無いワケです。最初の条件を満たしている事が分かれば充分、 って考え方です。 ii)意地でも積分する事にこだわる 困ったちゃんですね(笑)。 さて、このテの『合成関数』の積分には普通『部分積分』と言われる計算式を使い ます。f、gを共にxの関数として、 ・∫f'・gdx=f・g-∫f・g'dx となります。つまり、微分によってg'=1になっちゃえば積分は成功、ってワケです。 ここで⑬、⑭をもう一度見てみると、特徴として i)e^xは何度微分しても積分しても消えない。 ii)反比例の積分を実行し続けると積分し辛い対数が出てきそう。反面、微分し続け ると無限に終わりそうに無い。 ってなワケで袋小路にイっちゃいそうです。 しかし『開き直る』しかテが無さそうなんで、ここではii)の『反比例の部分を微分 し続けると無限に終わりそうに無い。』って性質に着目してみようと思います。 取りあえずuとvのどっちが比較的簡単に見えるか、と言うと、vの方が簡単そうな んで、vを議題として取り上げてみましょう。 ・v=∫{e^(x)}/{(1-x)^2}dx ここで『e^(x)を積分し、1/{(1-x)^2を微分する』方向で考えてみましょう。取りあ えず『1回目の部分積分』を実行します。 ・v=e^(x)*(1-x)^(-2)-2*∫e^(x)*(1-x)^(-3)dx 同様に『2回目の部分積分』を実行します。 ・v=e^(x)*(1-x)^(-2)-2e^(x)*(1-x)^(-3)+2*3*∫e^(x)*(1-x)^(-4)dx また『3回目の部分積分』を実行します。 ・v=e^(x)*(1-x)^(-2)-2e^(x)*(1-x)^(-3)+2*3*e^(x)*(1-x)^(-4) -2*3*4*∫e^(x)*(1-x)^(-5)dx 次に『4回目の…』ってもうイイでしょう(笑)。このままじゃ『ラチがあかない』 ってのは分かります。しかしながら、次の2つの事だけは分かってきました。 i)このvと言う関数は『無限に部分積分』し続けた結果の総和である。 ii)しかしながら各項には規則性がある様だ。 という訳で、何らかの『ベキ級数』では無いか、って推測が付きます。僕は高校 時代『数列』関係キライだったんですが(笑)、そうも言ってられないんで、 vをΣを使って表示してみましょう。(ここでの約束事は、今からはΣは初項を 第0項と置いて、第k項までの総和で、k→∞の極限を取る、って事にします。) ・v=(e^x)*Σ{(-1)^k}*(k+1)!*(1-x)^{-(k+2)} もうパソコンじゃあ見辛いですね(苦笑)。打つのも大変ですし(笑)。 さて、注意事項としてはe^xはΣの外に括り出されていますが、コレについては構い ません。と言うのも、Σってのはkに対して拘束力はあるんですが、変数xそのものに 付いては何の拘束力も無いんです。ご覧の様にe^xとkは無関係です。よってまるで 係数の様に扱って構いません。 ココで設定されたvの式に対して次の2つの疑問があります。それは i)v/(e^x)の第k項がホントに{(-1)^k}*(k+1)!*(1-x)^{-(k+2)}って保証がある のか? ii)vを微分したらホントにv'に戻るのか? i)に関して言うと、『予想された』第k項のカタチの保証を探せばイイ。端的に言 うと『数学的帰納法』で証明すればイイんです。ここに関してはメンド臭いんで宿題 にします(笑)。 ii)に付いては実際に微分して確かめてみましょう。使う公式は ・(f・g)'=f'・g+f・g' です。 v'=(e^x)*Σ{(-1)^k}*(k+1)!*(1-x)^{-(k+2)} -(e^x)*Σ{(-1)^(k+1)}*(k+2)!*(1-x)^{-(k+3)} 『ベキ級数の微分』そのものに関しては問題は無いと思います。基本的に一番最初の 微分公式である『整関数の微分』となんら変わりが無いからです。ただし、注意して 欲しいのは(1-x)そのものの微分で-1が出て来るトコロです。それが中央の符号が +じゃなくって-になってる所以です。ここを計算忘れしてると手痛い目に会い ます。(と言うか会ってました・笑) 上式をもう一回書き直すと、 v'=(e^x)*【Σ{(-1)^k}*(k+1)!*(1-x)^{-(k+2)} -Σ{(-1)^(k+1)}*(k+2)!*(1-x)^{-(k+3)}】 =(e^x)*(1-x)^(-2) と確かになります。(計算過程を記述したいんですが、パソコンで打つのは大変 です・笑。よって御自分で確かめて見て下さい。ヒントとしては二つのΣは1項 だけズレててアトは全部同じです。つまり、1つ目のΣの“初項だけ”残っちゃうん です。実際Σから普通の数式に直してみて項が消えていくのを確認してみて下さい。) ここまで来れば同様の手順でuも求められると思います。ご自分で実際に計算して みて下さい。ちなみにuは ・u=(e^x)/{(1-x)^2}-2v となるハズです。 よって解は積分定数をAとB、f(x)をΣ{(-1)^k}*(k+1)!*(1-x)^{-(k+2)}として、 ・y=Ae^(-x)+Be^(-x)+x/(1-x)-(2-x)*f(x) となります。