質問<2325>2005/5/5
先日はたくさん分かりやすい説明や文献を頂きましてすごく助かりました! 僕の数学に対する勉強の見通しもかなりひらけたことです。 今回は積分についてお願いします。 高校に通ってた頃、先生に個人指導を頼んでもよくシックリ来なかったのですが、 「微分の逆の操作が積分」というのがイメージできません。そもそも、微分の発見 の後、区分求積法から積分が生まれたんですよね? f(x)を微分した時に次数が下がったり、f(x)の種類によって導関数が異なるのは、 導関数や微分係数の定義式より明らかなのは分かるんですよ。 そして区分求積の方法で「グラフで視覚的に」面積を求められ、 lim(1/n)∑f(k/n)⇔∫f(x)dxが意味的に繋がっているのも理解できます。 でも、それが∫を用いた「それぞれの項に次数に関連した係数のつく」公式(?)や 「微分の逆の操作が積分」を証拠付ける理由として納得できないんです。 ・区分求積と積分公式の「係数的・次数的」結び付き。 ・それによる微分との結び付き。 についてレクチャーをお願いします。 ★希望★完全解答★
お便り2005/5/5
from=亀田馬志
ほいほい。 ええと、これに関してはうろ覚えなんで申し訳ないです(笑)。 従って、『知ってる範囲内』で答えて行きたいと思いますんで、 もし間違い等があったらご指摘宜しくお願いします。 >「微分の逆の操作が積分」というのがイメージできません。 イメージ出来なくって結構です(笑)。と言うのも微分法と積分法ってのは別々に 発展しました。『逆演算』だって気付いたのは登場してからちょっとアトなんで す。次からちょっと話をして行きます。 >区分求積法から積分が生まれたんですよね? はい。しかし正確には次の文章が正しいです。 『区分求積法から“定”積分が生まれた』 つまりハッキリ言っちゃうと、元々『定積分』と『不定積分』の計算って何の関 係も無いんです。 単純に言うと、微分の逆演算は『不定積分』であって『定積分』じゃないです。 歴史的には次の問題が別々に存在してました。 ①あらゆる図形の面積を求めたい。 ②幾何学的には作図で求められる『関数の接線』(要するに傾きですね)を文字式 で求めたい。 ①の方が区分求積法を経過して定積分に発展しました。コレはコレで独自に完結 してるんです。 ②が(確か)フェルマーとかも作図をしながら延々と考えていて、その議題がニュ ートンまで続くんですよね。 さて、実際問題『物理』とかで『運動方程式=ニュートンの運動の第2法則』、 つまり微分方程式ですよね、それを『積分』で解くにしても、特に『面積を求め てる』って感覚はありません。要するに『原始関数』を求める作業と『面積を求 める』作業ってのは特に感覚的には一致してないんです。単に『微分の逆演算』 を行うって事であるし、それは『不定積分』なんです。 さて、ニュートンが『定積分』、つまり求積法ですよね、それと微分方程式の解 法としての純粋な微分の逆演算である『不定積分』が何らかの関連がある、って 知ってたのかどうか・・・?コレはちょっと僕には分かりません。と言うのも僕もニ ュートンが書いた『プリンキピア』(力学と微分方程式について世界で初めて書か れた歴史的な本)本屋でザっと立ち読みで斜め読みした事はあるんですが(笑)、 『買えよ』ってツッコミはさておき(笑)、何が書いてあるかまるでサッパリ分か んなかったです(笑)。と言うのもまるで『幾何学』の本なんですよ(笑)。たくさ ん円とか補助線とか描かれていて、どこにも『解析学』とか『物理』のニオイが しなかった。『何じゃコリャ?』ってのが印象でしたね(笑)。 一説に拠ると、ニュートンは微分法を完全なカタチで発表するのをためらってた らしいんです。と言うのも、皆さん良くご存知の『極限値』の問題があって、0/0 が果たして成立するのか?ニュートンも『ウマくは行く筈』とは思ってたんですが、 説得力に欠けてたので発表するのを見合わせてたらしいんです。そこで『幾何学的 な手段』を用いて本を上梓するしかなかった。そして実際長い間、その極限値の 問題が『不確かなまま』微分法ってのは発展してきたんです(笑)。『取りあえず その厳密性は置いといて』って数学者が大量にこの分野に参加して議論が発展し ました。ε-δ論法が成立したのは随分とアト(確か20世紀に入ってから?)の話な んです。 まあ、そう言った経緯があって、もう一人の『記号発明の天才』、ライプニッツ が定積分経由で微積についてまとめて発表しちゃって、有名なニュートンvsライ プニッツの『どっちが第一発見者か?』論争が勃発した、ってワケなんです。 てなワケで、『区分求積法とその発展系である定積分』と『微分とその純粋な逆 演算である不定積分』をムリして結びつける必要性は無いと思います。 ro-ninnseiさんの感覚通りで間違いは無いんです。 ・面積を求める⇒「グラフで視覚的に」面積を求められる『定積分』 ・原始『関数』を求める⇒単純な微分の逆演算である不定積分 って認識で構わないと思います。 >区分求積と積分公式の「係数的・次数的」結び付き。 これちょっと意味が分からなかったんですが・・・単純に『整関数』の話かな? コレの事ですかね? ・∫u^ndu={1/(n+1)}u^(n+1)+C(Cは積分定数) 一般的には全ての関数に於いて『係数的・次数的』結びつきは特に無いです。 例えば前回やった ・∫e^udu=e^u+C なんかはそうですよね。他にも ・∫cosudu=sinu+C なんかもそうです。『係数的・次数的』結びつきがあるのは『整関数』に於いて のみ、です。 一応書いておきますが、『整関数』ってのは ・f(x)=x^n で表される関数です。 さて、今の『積分公式』ってのは上で書いたとおり、正確には『不定積分の公式』 であって『定積分の公式』ではありません。よって純粋に『微分の逆演算』として 定義されてるワケであって、『区分求積』とは特に関係無いんですよ。(まあ、 ひょっとしたら区分求積法で求められるのかもしれませんが、メンド臭そうです ね・笑。) 余談ですが、ニュートンは『微分法』ではなくって『流率法』と呼んでた様です。 表記はxの上に・を打って『エックスドット』(=xのtでの流率)と言ってたらしい です。その逆演算として、どう言った記号で逆演算を定義してたのかは僕は知り ません。現在ポピュラーな記号は全て『定積分の祖』ライプニッツが開発したモ ノが主なんで、そんなトコが混乱の一要因になってるのかもしれませんね。
お便り2005/5/6
from=亀田馬志
補足です。 夕べ、回答書いたアト、 『間違った事書かなかったよな?』 ってんで色々インターネット調べたんですが、大体合ってました(笑)。取りあえず 一安心です(笑)。 さて、『元々定積分と不定積分は全く関係の無い計算である。』ってんでひょっと してビックリしたかもしれません。 『じゃあ何で結びついてんだよ?』ってお思いかもしれません。でそれを保証する 『定理』ってのがあったんですね。あんまり当たり前なんで忘れてました(笑)。 ウィキペディア見てたら思い出したんですよね(笑)。便利ですね、ウィキペディ ア(笑)。皆さんも活用しましょう(笑)。 さて、高校の積分でも大学の積分でも教科書には必ず最初にコレ書いてるんです よ。知ってますかね? >f が区間 I 上連続ならば、F を f のある原始関数とするとき、 ・∫_a^b f(x)dx=F(b)-F(a) が成り立つ。 大体コレ読んだトキの人類に所属してる大半の生物の反応は(笑)、『何のこっち ゃ?』か『何当たり前の事言ってんだよ?』の2種類しかないです(笑)。よってあま り重要視しないんですよね、あまりにフツーで(笑)。 じゃあ何でコレが『基本定理』として重要なのか、そして何でコレを僕等『習う 側』が『あまりにフツーのコト言ってんじゃねえ!!!』って思うのか、と言うと 実は両者(教える側と教わる側)の間に意思疎通が無いからなんです。ハッキリ言 うと僕等は最初から『積分は微分の逆演算』ってのが刷り込まれてます。だから この『基本定理』の重要性が分かんないんです。ピンと来ない。 実はこの定理の『重要度』が何なのかと言うと、『定積分(区分求積法)』と『不 定積分』と言う『全く別の二つの計算』ってのを『同値だ』って言ってるのが重 要なんです。もう一回基本定理を見て下さい。 ・∫_a^b f(x)dx=F(b)-F(a) この式の意味は次の事を示唆してるんです。 ・(区分求積法)=(純粋な微分の逆演算である不定積分により算出した原始関数に b、aを代入して求めた差) 分かりますかね?ここで初めて全く関係の無い『定積分(区分求積法)』と『不定 積分』ってのが結びついたんです。 つまり『区分求積法』自体をΣ使ってゴチャゴチャ計算しなくっても『不定積分 から求めた原始関数』を利用して数値代入して差を求めれば『同じ結果が出ます よ』ってのを保証してくれてるんです。 コレのお陰で、僕等は『不定積分の公式』を『定積分』に『応用』して構わなく なったんです。もしこの『基本定理』が無かったら各面積の問題で延々と『区分 求積法』と格闘しないといけない(笑)。そんなワケでこれが『定理』として重要 とされてるんです。
お便り2005/5/6
from=honda
>イメージ出来なくって結構です(笑)。 ここにあえて異見を挿みたいかと(^^;; 歴史的には確かにおっしゃるとおりで 微分と積分が互いに逆演算なんてのは 「基本定理」とかいわれているくらいですが, これには明確な幾何的なイメージがあります 区分求積法はOKだということなので それをベースにします. 区分求積は曲線で囲まれた部分を 細い長方形の和で近似しようということです. f(x)=x^2くらいでイメージしてください 閉区間[0,t]の範囲の面積をF(t)なんてします F(t+h)-F(t)を考えると hが(正で)十分小さいときには区分求積の 一個の長方形とみなせるのが見えるでしょうか 実際は「左の辺」がf(t),「右の辺」がf(t+h) 「下の辺」が長さhの直線 「上の辺」がy=f(x)のx=tからx=t+hの部分 ですが,hが十分小さければ 底辺h,高さf(t)の長方形とみなせます 高さはf(t+h)でもいいのですが hは十分小さいのでf(t)でも同じとみなします f(t)の方がイメージが簡単ですし つまり,hが十分小さいときは F(t+h)-F(t)=f(t)h です. 両辺をhで割れば,微分係数の定義ですよね ということで F(t)を微分するとf(t)になるわけです 微分係数のもとになる 平均変化率の式の分母を払って F(t+h)-F(t)=f(t)h として,右辺を「長方形の面積」と とらえるのがポイントです. こんな風にとらえると 積分は面積なので掛け算です 掛け算だったら 次数が一個上がるのも納得しやすいのでは ないでしょうか. 逆に微分は面積と底辺から関数値を求めるので 割り算です. ということは次数が一個下がるのももっともな 話だと思います. ちなみに割り算よりも 掛け算の方が適用範囲が広いのは ご承知かと思います #掛け算は整数で閉じてますが #割り算は閉じてませんね これと同様で,微分はできないけど 積分はできるという関数が山ほどあります. ライプニッツなんかは このあたりを理解してたのでしょうね あの記号の作り方をみるとそうとしか思えないです 哲学・法律系の人でもあったようですので 抽象化されていたのかもしれませんね 一方ニュートンは物理現象から 攻めていた印象がありますね. そうなると掛け算割り算には直結しにくいかも #東大出版会の数学史叢書なんていうシリーズに #ニュートンとライプニッツの本がありますが #いかんせん・・・高価で難解です ======================== 上の議論はあくまでイメージだけです 厳密性は皆無ですが, 本質的には厳密にやっても大差ありません #厳密にやろうとすると実数論が必須・・・ y=f(x)の区分求積は xの方を分割して長方形を出しますが 実は逆のyの方を分割して長方形を出すというのも あります. 前者はリーマン積分,後者はルベーク積分といいますが 高校の範囲ではリーマン積分のみが出てきます 連続関数はリーマン積分可能で, リーマン積分可能ならばルベーク積分可能で なおかつそれらの値は一致するので 高校の範囲ならまあどっちを考えても同じですね.