質問<2339>2005/5/10
from=Diego
「代数学の問題(続編)」


KINOさんまたはほかの皆様へ

現在Nonkaruさんと同じ質問<2239>の問題に取り組んでいます。
KINOさんが答えてくれた(2)の解答のなかで、いくつか考えてもわからない
(自分の力では理解できない)もの①~⑤がありますので、よろしければもう
少し説明をいただけたらと思います。

(2)
集合 B の要素を仮に {a,b,c,d} とおいたとき,
{a,b,c,d}={1,-1,i,-i} とならなければならないことを示せばよいです。
その際,問題の意図を考えると「4数」というのは「4つの異なる複素数」と解釈
すべきでしょう。
①(複素数でなく実数だとすると,要求を満たす集合は存在しません。)
↑その理由が理解できていません。

余談ですが,要素が1つだけなら {1},要素が2つならば{1,-1} が「乗法,除法の
いずれに関しても閉じている集合」になります。

それでは,解答の指針(というよりも解答そのもの)を述べましょう。
まず,B が除法に関して閉じている,ということは,どの要素を用いても割り算が
可能なことが大前提ですので,B は 0 を含んでいません。
そして,B の要素のひとつを b とおくと,B が除法に関して閉じていることから
 b÷b=1 も B に含まれていなければなりません。
これで B の要素のひとつが 1 であることがわかりました。
では,b を 1 とは異なる B の要素のひとつとします。
②B が乗法に関して閉じていることから,b, b^2, b^3, ..., b^n, ... は全て B に
含まれていなければなりません。
↑B^3以降のものが含まれる理由がわかりません。

もしもこれら全てが相異なる場合,すなわちふたつの異なる自然数 m, n に対し,
常に b^m≠b^n が成り立つとすると,
B の要素が無限個になってしまい,B が4つの数からなるという仮定に反します。
よって b^m=b^n が成り立つような相異なる自然数の組 (m,n) があります。
便宜上 m>n として b^n でこの等式の両辺を割る(b≠0 なので b^n≠0 です!)
と b^(m-n)=1 が成り立つことになります。
つまり,b^k=1 となるような自然数 k が必ず存在します。この性質をみたす
自然数 k はたくさんあります。
なぜなら,b^k=1 ならば b^(2k)=b^(3k)=...=1 となって,k の倍数は全て同じ性質
をみたすからです。
そこで,このような自然数のうち最小のものを改めて k と書くことにします。
そして,このとき「b は k 位の数である」と言い,k を b の「位数」と呼ぶこと
にしましょう。
(この用語は一般的に流布しているかどうかは知りませんのでご注意下さい。)
ここで,b≠1 を仮定していますので,k≧2 であることに注意しましょう。

次に B の 1 とは異なる3つの数の位数はいずれも必ず4以下であることを示します。
再び b∈B かつ b≠1 を仮定します。b の位数を k とします。
先に注意したように k≧2 であることは確かですが,k の最大値を調べるため,
k≧3 と仮定します。
このとき,1, b, b^2, ..., b^(k-1) という k 個の数は全て互いに異なります。
もしそうでないならば,例えば p<q, 1≦p≦k-1, 1≦q≦k-1 なるふたつの
自然数 p, q で b^p=b^q をみたすものがあったとすると,
1=b^(q-p) となり,③1≦q-p≦k-2<k より,k よりも小さい自然数 r(=q-p) 
で b^r=1 となることになり,k がこのような性質を
みたす自然数のうちで最小のものであるという仮定に反してしまうからです。
↑③の不等式がどこから出てくるのかわかりません。


というわけで,これらの数の個数は 4 個を超えてはいけません。
したがって k≦4 でなければなりません。
以上から,k=2, 3, 4 という可能性があることがわかりました。
このことから,B は
    1位 の数 1 を必ず含み,
④残りの数としては
    2位 の数 -1,
    3位 の数 w, w^2 (w, w^2 は z^3=1 の虚数解,特に z^2+z+1=0 の2解),
    4位 の数 ±i
のうちのいずれか 3 つを含みます。
↑2位、3位、4位はK=2、3、4を当てはめたということでいいのでしょうか?

実は,3位の数 w, w^2 について w^2=1/w という関係がありますので,
どちらかが B に含まれるともう一方も B に含まれなければなりません。
4位の数 ±i についても -i=1/i より,どちらかが B に含まれれば
他方も B に含まれることになります。
したがって,w と i が同時に B の要素であるとすると,1, w, w^2, ±i は
いずれも互いに異なるため,
B は最低でも 5 つの要素を含むことになってしまい,問題の条件に合いません。
w も i も含まないとすると,含ませうるのは -1 だけになってしまい,要素の個数が
 4 つよりも少なくなってしまいます。
ゆえに,B は w か i のどちらか一方のみを必ず含むはずです。どちらの可能性が
あるのかを次に調べてみましょう。
w∈B の場合,1, w, w^2 の3つはもう決まりですので,残りのひとつは -1 しか
ありません。 
しかし,(-1)xw=-w については,
⑤  (-w)^2=w^2≠1, (-w)^3=-w^3=-1≠1,(-w)^4=w≠1, (-w)^5=-w^2≠1, (-w)^6=1
↑②とかかわっているかと思いますが、よくわかりません。


より,-w は6位の数ですので B を構成する数の位数が4以下でなければならないと
いう,上で示した事実にそぐいません。
したがって B は w を含みえず,代わりに i を含むしかありません。
このときもやはり 1, ±i だけでは個数が足りませんので,-1 も加えて4つに
しますと,前問で示したように {±1, ±i} はちゃんと乗法と除法に関して
閉じています。
以上より,B=A が従います。

以下は蛇足です。
結局,B の要素は方程式 z^4=1 の解に限られることになり,この方程式の解は
ちょうど ±1, ±i の4つしかなく,
この4数で作った集合が乗法と除法に関して閉じていることも確認済みなので,
B=A を結論することができました。
では n 個の数で構成された乗法と除法に関して閉じている集合を求めよ,
と問題を一般化したらどうなるでしょうか。
おそらく,z^n=1 の n 個の解で構成された集合が答えではないかと思われます。
なお,z^n=1 の解の位数は必ず n の約数になるようにも思えます。

以上①~⑤よろしくお願いします。
基本的な部分がわかっていないので申し訳ないですが。

★希望★ヒント希望★

お便り2005/5/12
from=KINO


先に丸2について解説します。
「乗法について閉じている」わけですから,b∈B ならば b^2=b*b∈B です。
また,b, b^2∈B より,b^3=b*b^2∈B でなければなりません。これを続ければ,
任意の正の整数 n に対し b^n∈B であることがわかります。

丸1について。

乗法について閉じている,ということと,集合 B の要素の個数が有限個(4個)と
いうことから,集合 B の要素は必ず絶対値が1でなければならないことがわかります。
なぜならば,先に見ましたように,b∈B ならば任意の正の整数 n に対し b^n∈B が
成り立ちます。b≠0 としてよいです(そうでないと除法が可能という問題の仮定に
反します)。
そして,|b|>1 と仮定しますと,m>n なる任意の正の整数の組 (m,n) に対し 
|b^m|=|b|^m>|b|^n=|b^n| となり,これより特に b^m≠b^n となります。
これが任意の正の整数の組 (m,n) に対して成り立つことから,B の要素が無限個
になってしまい,仮定に反します。|b|<1 のときは |b^m|<|b^n| より,
やはり b^m≠b^n となり,B の要素が無限個あるという矛盾が導かれます。
さて,|b|=1 となる実数はどのようなものがあるかというと,これは b=-1, 1 の
ふたつしかありません。
よって,もしも考える集合 B が実数でしか構成されていないものでしたら,どう
頑張っても B の要素の個数は2つ止まりで,4つの要素を持ちえないことになります。

丸3
1≦p≦k-1, 1≦q≦k-1 という不等式から出てきます。
前者から,-(k-1)≦-p≦-1. これと 1≦q≦k-1 を辺々加えて,
1-(k-1)≦q-p≦k-1-1. 整理すると 2-k≦q-p≦k-2.
さらに p<q という仮定から 0<q-p で,q-p は整数の差なので整数。
よって 0<q-p ということは 1≦q-p ということになります。
これらを総合して 1≦q-p≦k-2 としました。

丸4

> 2位、3位、4位はK=2、3、4を当てはめたということでいいのでしょうか?

その通りです。

丸5
なにがよくわからないのかがこちらにもよくわからないのですが,丸2と関わって
いるのではないかという言葉から察するに,
任意の正の整数 n に対し,(-w)^n が B に属している理由がわからない,と解釈
することにします。
これは丸2の回答として述べましたので,そちらをご参照下さい。