質問<2739>2005/11/30
from=西湖
「順列」


たびたび申し訳ありません。
昨年度の入試問題で分からなかった問題がもう1問ありましたので
よろしくお願いいたします。

問題:
nを2以上の整数とする。中の見えない袋に2n個の玉が入っていて、
そのうち3個が赤で残りが白とする。A君とB君が交互に1個ずつ玉を取
り出して、先に赤の玉を取り出したほうが勝ちとする。取り出した玉
は袋に戻さないものとする。
A君が先に取り始めるとき、B君が勝つ確率を求めよ。

★希望★完全解答★

お便り2005/12/10
from=亀田馬志


う~~~ん・・・・・・これ難問だなあ・・・・・・。
パっと見たカンジ、『マルコフ連鎖か?』とは思ったんですが、生憎まだ『マルコフ
連鎖』を自由に操れる程にはなっておりません(苦笑)。大変頼りないワタシでは御座
いますが(笑)、ちょっと挑戦してみたいと思います。
まあ、ある意味これは良問ではありますよ。うん。ただし『Z会的な意味での』良問
です(笑)。あるいは『大学への数学』的な意味でのね(笑)。計算練習ならいざ知らず、
こんなの大学入試に出すべき問題ではないと思います。多分私大の問題なのかしら?
赤本とかで解答見てみたい気もしますが・・・・・・。
しっかしこんなの解答して受験指導しなきゃならないなんて、高校の先生や予備校の
先生も大変だよな。ちょっと同情します。
では素人のワタシが挑戦してみましょう。

余談ですが、昔、文芸春秋社(だっけかな?)から『数学講義の実況中継』って参考書
が出ていまして、その時の講師が今をときめく秋山仁先生だったのですね。これが面
白かった。もう『こんな問題出すなよ』って言えるような難問大学入試からの例題の
オンパレードで、それを秋山先生が解いて行く講義を収録していました。非常に良書
だったんですが、どうやら絶版になったようで残念です。
ところでこう言う難問を攻略する手の内の一つとして秋山先生は『パターンを列挙し
てみろ』って仰っていました。まあ、時間があれば素晴らしいテですね(笑)。入試会
場だったらテンパってそれどころじゃないでしょうが(笑)、まあ、スマートじゃない
にせよ、手掛かりを探して不完全でも解答用紙に記入してみる、そして部分解答でも
いいから得点をゲットする。大事な発想です。そこでここでもそう言う発想で書いて
行ってみましょうか。

さて、最初に基本の考え方と基本方針を挙げて行ってみようと思います。
基本の考え方=確率とは何か?から始めましょうか。
なんでコレを一番最初に書こうか、って思ったのは、非常にこの出題が曖昧だから
です。次の一文が問題なんです。

『B君が勝つ確率を求めよ』

B君が勝つ確率を求めよ・・・・・・はあ?(by 摩邪)
以前書きましたが(質問<2372>参照)、確率、って言うのは2種類意味があるん
です。この問題の場合、試行x回目に勝つ確率、もしくはこのゲームに於いての漠然
とした勝率、その2つです。一体どっちを求めよ、って言ってるんだか分からない。
そして、前者を考えるなら比較的簡単なんですが、後者だったらとんでもない。非常
に難しい計算となります。
そこで、ちょっと公理系、って言われるものに戻って考察してみたいと思います。
ホントはそんなトコ行きたくないんですが(苦笑)。

コルモゴロフの確率公理:
関数Pが、次の3つの公理を満たす時、確率集合関数と呼ぶ。すなわち基礎空間Ωの
部分集合Eに対する3つの条件が確率の公理である。

①P(E)≧0
②P(Ω)=1
③P(E_1UE_2UE_3・・・)=P(E_1)+P(E_2)+P(E_3)+・・・
ただし、ここでE_1,E_2,E_3,・・・は互いに排反な事象である。すなわち任意のi≠jに
対して、E_i∩E_j=空集合φである。

何言ってるか分かりませんね(苦笑)。たった3行なんですが・・・・・・。
要するにこう言う事です。このA君とB君の間のゲームに於いて、A君が勝てばB君が
負ける、そしてその逆もありです。A君とB君が一緒に勝つとか、一緒に負ける、
なんて事はあり得ません。
要するにA君が勝つ確率P(A)とB君が勝つ確率P(B)は排反事象なんです。従って

③P(AUB)=P(A)+P(B)

を満たしています。また、それぞれP(A)≧0、P(B)≧0
も明らかです。つまり①も満たしている。
さて、ここでA君が勝つ事象Aがあって、B君が勝つ事象Bがある。つまり基礎空間が
Ω={A,B}ではあるんですが、②のP(Ω)=1が満たされてるのか、満たされていない
のか、イマイチ分かりませんね。②が満たされていなければこの問題は『確率の問題』
としては扱えないのです。それが『公理の要請』なんです。
さて、どうしてこう言うややこしい問題が起こりうるのか、と言うと、通常公理系
では取り得る事象{A,B}に関しては言及するんですが、P(A),P(B)そのものの値に付い
ては何も言及していないからです。つまり我々に一番大事な関心事、『確率の値』に
関しては無情報なんですね。そして実際問題的には『取りうる確率の値』に関しては
『定数と仮定して』しまうのです。
ちょっとこの辺り勘違いしている人が良くいるんで書いておきますが、例えばサイコ
ロの基礎空間Ωは確かに{1,2,3,4,5,6}です。ただし、この公理の要請ではサイコロ
の各目の出る確率が1/6である、とは一切言ってません。極端な話、サイコロの各目
が出る確率は僕らが②の公理を満たすように決定してもいいですし、もしくは『実験
によって』測られる類の量なんです。公理はその値までも『自明である』とは言及し
ていないんです。(イカサマサイコロの存在を考えれば分かりますよね?)
『事象の数が6つだから各目の出る確率は1/6である』なんて言う人をたま~に見かけ
ますんで、敢えて書いておきました。(公理とは別に“理由不十分の原理”と言われ
るものも確かにありますが、それは公理と違ってそんなに強い要請ではないです。)
さて、この問題の場合各ステージに於けるp(A)とp(B)の値はゲームが進むに従って
どんどん変わって行きます。しかも通常の独立事象と違って、p(A)の値がp(B)に影響
して、p(B)の値もまたp(A)に影響します。こう言う従属事象の確率の問題を通常『マ
ルコフ連鎖』と呼ぶ(ハズです)。そしてこのテの問題は独立事象の問題に比べて非常
に解き辛いのです。だから通常学生相手の問題ではメジャーになり得ないのです。
だって難し過ぎるんですもの(笑)。
まあ、『難しい難しい』って言っててもしゃーないんで、取り合えず突破口を探して
みます。今度は『基本方針』考えてみましょうか。取り合えず、問題の仮定、『取り
出した玉は袋に戻さないものとする』と言う仮定を一旦緩めて『取り出した玉は袋に
戻すとする』にしてみます。そうすると、赤い玉が取り出される確率は常に3/2nと言
う定数で独立試行になるんで、『確率分布』を考える手掛かりになり得ます。
詳しくは質問<2242>を見てもらいたいのですが、『幾何分布』と言われる確率
分布があります。
これは『x 回の連続失敗のあと x+1 回目に初めて成功する』確率分布で、独立試行
の確率をpとすると、

・f(x)=p*(1-p)^x・・・☆

と表現します。
どうしていきなりここで『確率分布なんて考えるのか?』と言うと、一般に確率分布
f(x)はあらゆる可能なxに付いての確率事象を足し合わせれば、

・Σf(x)=1

と言う性質があるからです。そうです。これは公理の②に対応しているのです。
つまり、このゲームに於いて、A君が勝つにせよB君が勝つにせよ、仮に独立試行の
確率3/2nを用いれば、☆と考え合わせればx+1回目に赤玉が出る確率は

・f(x)=3/2n*(1-3/2n)^x・・・★

で書き表せる、と言う事。そして重要なのは★式は

・連続失敗率×成功率

と言う構造を持っている事。これを武器として、問題の条件である『取り出した玉は
袋に戻さないものとする=従属事象の確率』に取り掛かる手掛かりにしてみましょう。
ちょっと長くなったんで、明日に続きます(笑)。ちょっと御自分でもヒントを手掛か
りにして考えてみて下さい。


お便り2005/12/12
from=けんさん


例えばBが3回目(トータルで6回目)で勝つ確率を考えてみましょう。
A白B白A白B白A白B赤ですから
(2n-3)/2n×(2n-4)/(2n-1)×(2n-5)/(2n-2)×(2n-6)/(2n-3)
    ×(2n-7)/(2n-4)×3/(2n-5)
=3(2n-6)(2n-7)/{2n(2n-1)(2n-2)}となります。

Bがk回目に勝つ確率は
{3(2n-2k)(2n-2k-1)}/{2n(2n-1)(2n-2) }(うまく約分できます)
となりますから

Σ(k=1)^(n-1){ 3(2n-k)(2n-2k-1)}/{2n(2n-1)(2n-2) }
(計算略。nに惑わされずがんばってください)
=(4n-5)/{4(2n-1)}