質問<2986>2006/2/25
from=飛鳥 涼
「集合」


写像f:R2→R2(2は2乗のこと),f(x,y)=
(ax+by,cx+dy)が全単写となるための必要十分条件を求めよ。
 
すでに質問としてでていますが、juinさんの解答で
(1)で、同時に単写である。と記載されていますが、
 ※なぜ単写であることがいえるのか。
(2)で、また全写であればad-bc≠0であり、同時に単写と記載されていますが
 ※なぜそういえるのか。

それぞれ教えてください。

★希望★完全解答★

お便り2006/2/27
from=angel


元の解説がどれかわかりませんので、はじめからいきます。

直感的に、一次変換の話題
「全単射⇔逆写像(逆変換)が存在⇔逆行列が存在⇔ad-bc≠0」
がありますので、念頭におくとやりやすいでしょう。

導入:
f(x,y)=(X,Y) とすると、次の行列の等式が成立する。

 (X)=(a b)(x)
 (Y) (c d)(y)

つまり、正方行列をAとおくと、t(X Y)=A・t(x y)
※t(x y) は転置(transposed)行列を表します
 (縦の行列は書きにくいので、あえて横にしているわけです)

・全射の証明(必要条件)
 「全射⇒ad-bc≠0」の対偶、「ad-bc=0⇒全射ではない」を示します。

 ad-bc=0 の時、bc=adより
  b(cx+dy)=bcx+bdy=adx+bdy=d(ax+by)
 a≠0 or b≠0 の時
  f(x,y)=(X,Y)に対し、(X,Y)は、XY平面内の、方程式 bY=aXの示す直線上
  に存在する。
 a=b=0 の時
  f(x,y)=(X,Y)に対し X=ax+by=0 より、(X,Y)は、XY平面内の 直線 X=0 上
  に存在する。

 いずれにせよ、明らかに値域が R^2(XY平面全体)と異なるため、fは全射ではない。

・全射の証明(十分条件)
 「ad-bc≠0⇒全射」を示します。

 ad-bc≠0 の時、行列Aに逆行列inv(A)が存在し、
 任意の (X,Y) に対し、
  t(x y) = inv(A)・t(X Y)
 のように (x,y) を定めると、
  A・t(x y) = inv(A)・A・t(X Y) = t(X Y)
 よって、f(x,y)=(X,Y)

 すなわち、任意の(X,Y)に対し、f(x,y)=(X,Y)なる(x,y)が存在するため、
 fは全射である。

・単射の証明
 「ad-bc≠0⇒単射」を示します。
 ad-bc≠0 の時、行列Aに逆行列inv(A)が存在する。
 今、f(x1,y1)=(X1,Y1), f(x2,y2)=(X2,Y2) とすると、

 (X1,Y1)=(X2,Y2) ⇔ t(X1 Y1)=t(X2 Y2)
 ⇒ A・t(x1 y1) = A・t(x2 y2)
 ⇔ A・t(x1-x2 y1-y2) = o (2×1零行列)
 ⇒ inv(A)・A・t(x1-x2 y1-y2) = inv(A)・o
 ⇒ t(x1-x2 y1-y2) = o ⇔ (x1,y1)=(x2,y2)

 すなわち、f(x1,y1)=f(x2,y2) ⇒ (x1,y1)=(x2,y2) 
 これはfが単射であることを示す。


お便り2006/3/5
from=飛鳥涼


以前angelさんに解答していただき、ありがとうございました。
その中で、ad≠bc⇒単写はわかりました。

単写⇒ad≠bcになる理由を教えてください。
よろしくお願い致します。


お便り2006/3/6
from=angel


「必要十分」を示すだけなら、以前回答した3点でよいのですが、
確かに単射の必要条件は示してなかったので、改めて証明を挙げます。
--
この f の性質、f(x1,y1)-f(x2,y2)=f(x1-x2,y1-y2)を利用して、
「単射ではない」という条件を整理すると、

単射ではない
⇔「任意のx1,x2,y1,y2に対してf(x1,y1)=f(x2,y2)⇒(x1,y1)=(x2,y2)」
 が成立しない
⇔ ある x1,x2,y1,y2 が存在して、(x1,y1)≠(x2,y2)かつf(x1,y1)=f(x2,y2)
⇔ ある x,y,x1,x2,y1,y2 が存在して、x1-x2=x, y1-y2=y, (x1,y1)≠(x2,y2)
 かつf(x1,y1)=f(x2,y2)
⇔ ある x,y,x1,x2,y1,y2 が存在して、(x1-x2,y1-y2)=(x,y)≠0 
 かつ f(x1,y1)-f(x2,y2)=f(x,y)=(0,0)
⇔ ある x,y が存在して、(x,y)≠0 かつ f(x,y)=(0,0)

その上で、「単射⇒ad-bc≠0」のかわりに、
対偶「ad-bc=0⇒単射ではない」を証明する

ad-bc=0 の時、
f(-b,a)=(0,ad-bc)=(0,0)
f(d,-c)=(ad-bc,0)=(0,0)

(1) a=b=c=d=0 の時
 任意の(x,y)に対して、f(x,y)=(0,0)のため、明らかに単射ではない
(2) a,bのいずれかが 0 では無い時
  (-b,a)≠(0,0) に対して、f(-b,a)=(0,0)
 すなわち、f(x,y)=(0,0) となる (x,y)≠(0,0) が存在するため、単射ではない
(3) c,dのいずれかが 0 では無い時
 (d,-c)≠(0,0) に対して、f(d,-c)=(0,0)
 すなわち、f(x,y)=(0,0) となる (x,y)≠(0,0) が存在するため、単射ではない

ad-bc=0であれば、いずれの場合でも、fは単射ではない。


お便り2006/4/26
from=たろう


<2986>の問題ですが、次の2点について指摘を受けました。
1,逆行列を持ち出すなら、きちんと示すこと
2,ad-bc≠0⇔全単射を示したいのだから、
    ad-bc=0⇒単射でない
    ad-bc=0⇒全射でない  のどちらかを言えればいい。
   その理由は?

です。どなたかアドバイスを下さい。


お便り2006/4/27
from=UnderBird


たろうさんの再質問に横から割り込んで失礼ですが
1、については、逆行列について調べてください。
2、について
 ad-bc≠0⇔全単射 とは、
 ad-bc≠0⇔全射かつ単射
  2つの命題は同値ですから否定を取ると
 ad-bc=0⇔全射でない または 単射でない
よって、どちらか一方を証明すればよいと言うことではないでしょうか?