質問<497>2001/5/29
どうにもこうにも解らないので、教えて下さい。 体積が一定の場合、表面積が最小となるのは「球」であることが証明で きません。 高校数学の範囲を越えた解法でもよいので是非教えて下さい。 よろしくお願いします。
お返事2001/5/29
from=武田
インターネットの検索で、佐藤郁郎さんの「Ikuro's Home Page」を発見 しました。そのホームページの「多様体の微分幾何?」に関するところに あった説明が解答として相応しいので、掲載しました。感謝!! ------------------------------------------------------- 【1】クマはなぜ丸くなって冬眠するか(等周不等式) 平面凸集合に関して,周の長さLが一定で面積Aが最大の図形(面積 が一定で周の最小な図形)は円であるという事実は古代ギリシアの時代 からよく知られています.そのことはL2 ≧4πAという不等式で表現 されます.等号は円のときだけ成立します. 同様に,3次元凸集合に対し,表面積をS,体積をVとすると S3 ≧36πV2 が成り立ちます. 等号成立は球のときだけで,すべての立体中で球が表面積に対して最大 の体積をもっています. ところで,シャボン玉はなぜ丸くなるのでしょうか? 等周不等式 S3 ≧36πV2 に関係していることは直感的に発想できるでしょうが,後述するように, 等周不等式は平均曲率一定曲面と密接な関わりをもっています. また,クマやリスなど動物達は(この定理を知っているから)丸くなっ て冬眠しますが,(この定理を知らない)酔っぱらいのオヤジは往来に 大の字になって寝ていて凍死するはめになるというわけです. さて,立体図形のS3 /V2 は平面図形のL2 /A の相当していて,「等周比」あるいは「等周定数」と呼ばれます. そこで,等周不等式 L2 ≧4πA S3 ≧36πV2 をどんな次元にも適用できるように公式化してみましょう. 半径rのn次元超球の体積はVnrn ,表面積はnVnrn-1 となりますから, 等周比を無次元化するために, n次元等周比=表面積n /体積n-1 と定義すると, n次元等周比≧nn Vn=nn πn/2 /Γ(n/2+1)(=Cn) を得ることができます.等号は超球のときに限ります. この証明はVn=πn/2 /Γ(n/2+1)であることが理解できれば 簡単ですが,少々長くなるのでコラム「幾何の問題(PartⅡ)」に譲ること にします. とくに,n=2のときとn=3のときについては, C2 =4π C3 =36π になることがわかります.以下, C4 =27 π2 C5 =8/3*54 π2 C6 =65 π3 ・・・・・・・ となりますが,等周比が有理数(整数)×πの形となるのは, 2次元・3次元だけのようです.
お便り2001/5/30
from=佐藤 郁郎
お役に立てて光栄です.転載は一向に構いません. 「球」であることの証明は,一般的には「シュタイナーの対称化」 でなされるようですが,凸体であって対称性のある図形といえば 「球」なのですから,直感的に正しいことは誰しもわかると思います. むしろ,シュタイナーの証明を見てしまうと, 狐につままれたような感じになり,これで 本当に証明になっているか疑問が残りました.