質問<771>2002/1/20
from=戒兎
「相加相乗平均の一般化の証明」


nが自然数であるとき、
(a1>0)∧(a2>0)∧・…∧(an>0)
⇒(a1+a2+…+an)/n≧(a1×a2×・…×an)の1/n乗
を証明せよ。

等号成立⇔a1=a2=・…=an


お便り2002/1/22
from=d3


質問<771>の解答です.
こんなのもいいのでは?
a>0,b>0で,次は既知とします.
(a+b)/2≧√(ab)  ・・・#
pを自然数とするとき,q=2^pで,
a[1],a[2],a[3],・・・,a[q]  で,ふたつずつで#に当てはめる.
(a[1]+a[2])/2≧√(a[1]a[2]) ,
(a[3]+a[4])/2≧√(a[3]a[4]) ,
・・・・・・
(a[q-1]+a[q])/2≧√(a[q-1]a[q]) .
出てきた不等式で右辺をまた,ふたつずつ#に当てはめる.
これを繰り返すと,
(a[1]+・・・+a[q])/q≧(a[1]×・・・×a[q])^(1/q) ・・・%
そして,ここで等号が成り立つのはすべてのa[j]が等しいときです.
n=2の累乗のときは証明できたので,
いま,2^(p-1)<n<2^p=q とします.
m=(a[1]+・・・+a[n])/nとかきます.
さらに,a[n+1]=a[n+2]=・・・=a[q]=mとすると,
a[1]+・・・+a[n]=mn,a[n+1]×・・・×a[q]=m^(q-n) で,
%から,
{mn+(q-n)m)/q≧{a[1]×・・・×a[n]×m^(q-n)}^(1/q)
m≧{a[1]×・・・×a[n]×m^(q-n)}^(1/q)
両辺をq乗して,m^q≧a[1]×・・・×a[n]×m^(q-n)
よって,m^n≧a[1]×・・・×a[n]
これの両辺のn乗根をとれば,問題の不等式は証明されたことになります.


お便り2002/2/9
from=GO


771の他の方法とかわないのでしょうか?


お返事2002/2/9
from=武田


d3さんが証明したのが、一般化の証明法ですので、
他には無いと思われます。


お便り2002/2/10
from=GO


すみませんがmのていぎがよくわからないのですが?


お返事2002/2/11
from=武田


d3さんの証明を分かりやすく表現してみると、
①nが2の累乗のとき、 とすると、
  ………(#)を既知として、
 の左辺を(#)を利用して、
  
   
 これを2つずつ繰り返して、
  
②nが2の累乗以外のとき、 とすると、
  とすると、 とおいて、
 (q-n)個の すべてを上のmとおくと、
  
 ①より、
  
 したがって、
  
  
 両辺をq乗して、
  
  
  したがって、n乗根をとると、
  
①②より、すべての整数n≧2で、相加平均相乗平均の一般化は証明できた。
 

お便り2002/2/24
from=高橋 正剛
武田  様

長男の受験勉強の手助けをしていて、標記の問題を解説した後、
たまたま「高校数学の窓」に遭遇し、楽しませていただきました。

それで、

> d3さんが証明したのが、一般化の証明法ですので、
> 他には無いと思われます。
に関して、ちょっと気にかかり、お便りさせていただきます。

要点は、次の通りです。

1) 相加平均と相乗平均の関係は、対数関数を通して見た方が
   見通しがよい。

2) すなわち、相乗平均とは、対数をとって平均することである
   と思う。そう思えば、相乗平均では、相当大きい数でも小さく
   評価されて平均されるので、平均値が小さめになることは、
   直感的にも理解しやすい。

3) こういう感覚での証明の要点は次の通り。
 
   ① 対数関数が上に凸であることから

        ===> f(s*a + t*b) >= s*f(a) + t*f(b)
                ここで、s, t >=0; s+t=1

        ===> 上の性質を使って、数学的帰納法により、一般に
            f((a+b+...)/n) >= (1/n)*(f(a)+f(b)+...)
            を示す。

   ② 対数関数が単調増加であることから、大小関係が
        値域と定義域で同じ方向に保たれる。

すなわち、相加・相乗平均の関係は、対数関数の凸性と単調性
からの単純な帰結であるということです。
ご存じかもしれませんが、念のためお知らせしました。

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数学が苦手の受験生の父より


お便り2002/3/2
from=高橋 正剛
「相加・相乗平均の一般化の別証明」につき、
ページへの掲載、ありがとうございました。

そのまま掲載されることを意図しなかったため、高校生向けという
意味では説明不足の懸念があり、要点のみで恐縮ですが、補足
いたします。

問題は、対数関数が上に凸であることから、

    (1)    f(s*a + t*b) >= s*f(a) + t*f(b)
                ここで、s, t >=0; s+t=1

と簡単に片付けてしまっていることにあります。
(1) は、むしろ、凸であることの定義であり、より正確には、例えば

    (2)    区間[a, b] で関数 f が上に凸であること

            <=>(定義)

            任意の x1, x2 ∈ [a,b] に対して

            f(s*x1+ t*x2) >= s*f(x1) + t*f(x2)

            ここで、s,t は s, t >=0; s+t=1 を満たす任意の実数。

というように定義します。不等式の右辺は、関数のグラフで、x1, x2
に対応する関数値を表す2点を結ぶ線分を任意の比率で内分した
点の高さを示しますので、不等号は、その点で関数値が上にある
ことを示します。

このように定義した上で、これが微分可能な関数の場合には、

    (3)    区間[a,b] で2階微分可能な関数が上に凸

            <=> 2階導関数がその区間で正の値をとらない

ということが平均値の定理を使って証明できます。

対数関数の2階導関数は -1/x^2 で正値をとらないので (3) に該当
するというわけです。

なお、対数関数を使うということは、指数の概念をn乗・n乗根(1/n乗)
という自然数から、実数にまで拡張した段階での話であり、そういう
視点から見ると、相加相乗平均の大小関係が、凸というより一般的な
性質から、1つの必要条件として出てくるということです。

すなわち、この証明方法は、上記のような解析学の基礎的な知識を
前提にして成り立つものですので、その辺りの話を抜きにして

    「単純な帰結」

と言ってしまっては、証明の肝心な部分を省略して、単純に見える
という印象を与えたに過ぎなかったかなと反省しています。

前提知識が少なくてすむという意味で、高校生向けには、d3さん式
の証明が無難かもしれませんが、より一般的な視点から問題を
見ておく意味はあるのではないかと思います。

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数学では目標を達成しても、物理で失敗した受験生の父