質問<882>2002/6/26
「平行」の定義として ①交わらない2直線 ②1つの直線に対して等しい角度で交わっている2直線 というものがあると思います。 ①の場合、同位角が等しい、ということ(つまり②ですが)が示せず、 ②のように定義すると①が示せない、 という話を聞いたことがあるのですが、どうなのでしょうか。 よろしくお願いします。
お便り2002/6/27
from=phaos
公理として 「平面上で直線外の一点を通ってこの直線と交わらない直線は唯一つ 存在する」というのを採用すれば, ①から②が示せます。 しかし, 上記の公理を仮定しないと, 「平面上で直線外の一点を通ってこの直線と交わらない直線が少なく とも二本存在する」 という幾何学 (ロバチェフスキとボリヤイの非ユークリッド幾何学又 は双曲線幾何学) が作れるので, 当然交わらないからといって, その直線は同位角が等しいとは限らないということになるわけです。 一方 Riemann は平行線というものは抑々存在しないという公理 (平面上で直線外の一点を通ってこの直線と交わらない直線は存在しな い) を採用しても 楕円幾何学というものが作れることを示したので, この場合には②から①を示すことが不可能であるわけです (抑々そんなものはないのだから)。 即ち, ①と②がどういう関係にあるかというのは, どのような幾何学 (即ち公理という一種のルール) を採用しているかということに依存 しているのです。 ユークリッドの原論に於ける平行線の公準 (第五公準) 一直線が二直線に交わるとき, もしその同じ側にある内角を加えた ものが二直角より小さかったならば, 二直線はこの方向へ延長してゆけば, 必ず交わる の述べ方が普通でなく難しいのは, 実はユークリッドは非ユークリッド 幾何学の存在に気付いていたのかもしれない という説があります。 更に興味がおありでしたら是非「非ユークリッド幾何学」で検索して ご覧になることをお勧めします。