質問<196>99/11/22
from=千田 直
「ベクトルの現実の量」


 武田先生、「ベクトルの内積について」の質問にご丁寧に
解答していただきましてありがとうございました。
それから、お礼がたいへん遅くなり本当に申し訳ありません
でした。お詫び申し上げます。

 それから、教えていただいた内容から、ベクトルについて
また新しい疑問を抱くようになりました。これも申し訳あり
ませんが教えていただけないでしょうか。
勝手なことを申しましてすみません。

質問

 ご説明いただいた内積を考える場合の2つのベクトルは、
幾何学的な意味においても、成分表示的な意味においても、
質が違うもののように感じます。ということは、この場合の
2つのベクトルについては、現実の量の世界では足したり引
いたりすることに意味はないように感じられるのですがいか
がでしょうか。
ちょうど、単価と個数を足したり引いたりするのは無意味な
ように。


お返事99/11/23
from=武田


 足し算と引き算は「同じ量」どうしについての演算です。
だから異なる量の和差は不可能です。値段と個数を足しても
意味がありません。
 それに対して、かけ算は「異なる量」の演算です。特に数
のかけ算は
    1あたり量×いくつ分=全体量
と言う仕組みからできています。これらはすべて異なる量で
す。例えば、キャラメル10個入りの箱で言いますと、
    10個/箱 × 3箱 =30個
となります。1あたり量が10個/箱で、いくつ分が3箱、
全体量が30個と言う異なる量間の演算です。
 しかし、数の場合は足し算表現もできるので、
10個+10個+10個=30個となり、そのことが足し算
とかけ算の区別することを邪魔しているところがあります。

 ベクトルも現実の量として考えると、いろいろな量が考え
られます。そのことが自然科学や社会科学の役に立つわけで
すが、演算となると、上の数の演算と同じ仕組みになってい
ます。2つの異なる量のかけ算は内積という異なる量となり
ます。同じ量の内積は考えられません。
    値段のベクトル・個数のベクトル=合計金額
           ↑内積      (スカラー)