質問<20>98/6/23
from=坂田
「数列の和」


1+1/2+1/3+・・・+1/nの和を教えてください。
これは高校で習うものなのでしょうか?


お返事98/6/24
from=武田


見かけは簡単そうに見えますが、とても高校では手に負えません。
オイラー・マクローリンの公式を使って、
1+1/2+1/3+・・・+1/N
=C+logeN+1/(2N)-1/(12N2)+1/(120N4)-1/(252N6)+…
Cをオイラーの数といい、C=1/2+1/12-1/120+1/252-…となります。
1+1/2+1/3+・・・+1/N>logeNだから、
lim logeN=∞より、lim(1+1/2+1/3+・・・+1/N)=∞
N→∞        N→∞
となり、収束せず発散していきます。


上のやり方でも、正確なnの式は求められません。近似値は何とか求
められます。
他にないかと高校の同僚に聞いたところ、
昔の教育課程で3年理系の数学として勉強した「積分・微分」の本に
次の不等式の証明が載っていることを教えてくれました。

log(n+1)<1+1/2+1/3+……+1/n<1+log n 

確かにこの不等式の中辺に問題がでてきていました。今の「数学Ⅲ」
には、もう載ってはいません。
しかし、この式も挟み込みで、大まかな値を求めることしかできません。
この不等式は問題式が発散することを示しています。


お便り98/10/1
from=yuki


たまたまこのウエッブサイトをみつけて興味深く読んで
います。まだよくは読んでいませんが、気になったのが
1つ。質問20で、

1+1/2+1/3+・・・+1/nの和を教えてくだ
さい。これは高校で習うものなのでしょうか?

とあり、回答が2つ出ていてなにやら近似的な値が出そ
うな雰囲気をかもしだしているのですが、この場合の発
散はnが決定できないので、一般式として表すことは
“完全に不可能”です。

つまり、「和は一般に求められない」が正しい回答とな
るのではないでしょうか?

なお、この調和級数が発散することは、1350年代にN.
オレームが次のように証明しています。

無限調和級数
Sbi = 1 + 1/2 + 1/3 + 1/4 + ...

は、次の劣級数
Sai = 1 + 1/2 + 1/4 + 1/4 + ...
                ^^^^^^^^^^   ^^^^^^^
    = 1 + 1/2 +    1/2     +  1/2   + ....

(Sはシグマのことです)

が発散するので、定理*により発散する。

*(定理)すべての十分な大きなiに対し、0<= ai <= bi
とすると、Sbiが収束するならSaiも収束する。

なお、高校数学では収束や発散が「無限」級数で起こる
ということを簡単にしか触れないので、“最後が1/n
で終わる”からなんとなく“近似でも値が確定しそう
だ”という気がしてしまう学生が多いらしいです。

級数について教えるときに気をつけないとならない点だと思います。

つまり、nを登場させるときに「“もし”すべての正の
整数nに対してanが与えられたら、これを無限数列を言
い、(an)=(a1,a2,....)のように書く」とnについての
考え方を浸透させないと、こうした質問は減らないよう
な気もします。

以上稚拙ながら、、、