質問<355>2000/11/12
from=もあい
「入試問題・行列」
行列A=(a b)は、ある自然数nに対してAn =0 (c d) となるとする。ただし、0は零行列である。 (1)ad-bc=0を証明せよ。 (2)もしb=0ならば、a=d=0となることを証明せよ。 (3)もしb≠0ならば、 P=(1 0) (-a/b 1)として、P-1APを計算することによって、 a+d=0を証明せよ。 (4)A2 =0を証明せよ。 [00 東京都立大・理、工〕
お返事2000/11/13
from=武田
2次正方行列A≠零行列Oで、かつAn =Oの条件の下で、 次を証明していく。 そのとき役立つのが、ケーリー・ハミルトンの定理である。 それは、「任意の2次正方行列Aに対して、 A2 -(a+d)A+(ad-bc)E=Oが成り立つ。」という ものです。 問1 ad-bc≠0ならば、detA≠0なので、逆行列A-1がある。 条件An =Oの両辺にA-1を(n-1)回掛けると、 An ・(A-1)n-1=O・(A-1)n-1 ∴A=O a=b=c=d=0より、ad-bc=0 仮定に反するから、 An =Oとなるのは、ad-bc=0である。 問2 ad-bc=0で、かつb=0ならば、ad=0∴a=0またはd=0 いま、a=0とすると、ケーリー・ハミルトンの定理より、 A2 -dA=O A2 =dA 両辺にAを掛けると、 A3 =dA2 =d2 A これより、 両辺にAn-2を掛けると、 An =dAn-1=dn-1A 左辺は条件より、An =O A≠Oより、 ∴d=0 したがって、a=d=0 問3 ad-bc=0で、かつb≠0のとき、 P=(1 0)とP-1=(1 0) (-a/b 1) (a/b 1) をAの左と右から掛けて、 P-1AP=(1 0)(a b)(1 0) (a/b 1)(c d)(-a/b 1) =(0 b ) (0 a+d) 両辺をn乗すると、左辺は (P-1AP)n =P-1An P=P-1OP=O 右辺は (0 b )n =(a+d)n-1(0 b ) (0 a+d) (0 a+d) b≠0より、(0 b )≠O (0 a+d) ∴a+d=0 問4 b=0であってもb≠0であっても、a+d=0 ad-bc=0かつa+d=0のとき、 ケーリー・ハミルトンの定理より、 A2 -0・A+0・E=O ∴A2 =O