質問<395>2001/1/21
特性方程式というものについて質問させてください。 高校で漸化式を解くとき『特性方程式』をとくとできるからこれは覚え ろといわれました しかし特性方程式は何なのか?すごく疑問になりました 自分で調べたところ Anが収束するときlim(n⇒∞)An=αとしたときこのαが特性方程式の記号 であると 理解しています。 上の考え方でAn+1=(sinAn - 1) (n≧1) A1=aとしたとき Anが収束して極限値をβとすると lim(n⇒∞)An+1=lim(n⇒∞)(sinAn - 1) ⇔β=lim(n⇒∞)(sinAn - 1)...........(※) となると思うのですが特性方程式を解くときって β=(sinβ - 1) という形にならないといけませんよね?(※)はβ=(sinβ - 1)となりうる のでしょうか? また特性方程式が使えない場合の漸化式があると先生にいわれ 問題量で慣れるしかないといわれましたが どういう場合が特性方程式がなりたたないのでしょうか? 自分のしらべた考え方でいうとAnが収束しないときだと思うのですが Anが収束するかどうかを調べるのも相当大変です。やはり問題量でなれ るしかないでしょうか? 長くなりましたがご教授おねがいします
お返事2001/1/23
from=武田
漸化式の特性方程式と行列の固有方程式は同じものですが、 これが成り立つのは、 もとの式が、「線形性」を持っているかどうかによります。 線形性とは、次のような性質が成り立つ作用素のときに 言える事柄です。 数列の時の作用素(差分Δ)では、 Δ{a・A(n+1)+b・A(n)}=a・ΔA(n+1)+b・ΔA(n) となるか? 微分の時の作用素(d/dx)では、 (d/dx){a・f(x)+b・g(x)}=a・(d/dx)f(x)+b・(d/dx)g(x) となるかどうか? したがって、極限の式lim(n⇒∞)An=αのとき、αが特性方程式で あるというのは間違っていると思います。 β=sinβ-1も違うと思います。 つまり、漸化式 An+1=(sinAn - 1) (n≧1) A1=a のときは、その作用素(差分) が線形性をもたないので、特性方程式は無いと考えた方がいいと 思います。 A(n+1)-sinA(n)+1=0より、 Δ{A(n+1)-sinA(n)+1}={A(n+2)-sinA(n+1)+1}-{A(n+1)-sinA(n)+1} =ΔA(n+1)-ΔsinA(n)+Δ1 ≠ΔA(n+1)-sinΔA(n)+Δ1 したがって、線形性はもたない。 線形性を持つ漸化式(線形3階差分方程式)の例で考えてみよう。 A(n+3)-2A(n+2)-A(n+1)+2A(n)=0とすると、 ただし、A(1)=1,A(2)=2,A(3)=3とする。 n A(n)=ρ とおくと、 n+3 n+2 n+1 n ρ -2ρ -ρ +2ρ =0 n 3 2 ρ (ρ -2ρ -ρ+2)=0 ^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^ ↑これを特性方程式という。 (特性方程式は、整式の形をしている。) 因数分解をして、 (ρ-1)(ρ+1)(ρ-2)=0∴ρ=-1,1,2 一般項は、 n n n A(n)=C1・(-1)+C2・1 +C3・2 n n =C1・(-1) +C2+C3・2 これに、A(1)=1,A(2)=2,A(3)=3を代入して、C1,C2,C3を求めて、 1 n 1 1 n A(n)=―(-1)+―+―・2 6 2 3 1 n+1 n =―{2 +(-1) +3}………(答) 6 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 群馬大学の瀬山士郎先生にアドバイスを依頼したところ ①質問者は、数列の極限があるとき、漸化式の中のA(n)や A(n+1)をαで置き換えたものを満たさないといけないと いうことと特性方程式を混同したのではないか。 ②特性方程式を持つのは、定数係数の漸化式のときと書き足し た方がより正確だと思う。 と言うメールを頂きました。はっきりしない点があったので、 大変助かりました。感謝!!
お便り2001/1/23
from=川口
特性方程式について質問させていただいた川口です。 ご回答ありがとうございました。 疑問点があるのでもう少し質問させてください 漸化式の特性方程式が成り立つのは『線形性』をもつときというのは 理解しました。 先の例でA(n+1)-sinA(n)+1=0という漸化式を考えたとき ΔA(n+1)-sinΔA(n)+Δ1が成り立てば線形性がなりたつということも わかりました。 それで武田先生は Δ{A(n+1)-sinA(n)+1}={A(n+2)-sinA(n+1)+1}-{A(n+1)-sinA(n)+1} =ΔA(n+1)-ΔsinA(n)+Δ1 と変形されているのですが△sinA(n)とsin△A(n)の違いがわからないせいか この変形(青色部分)がよくわかりません・・ 結果を見るとたしかに 赤字部分とΔA(n+1)-sinΔA(n)+Δ1は異なるので線形性をもたず特性方程式がないですね。 また自分なりにいろいろと例をあげて考えているのですが たとえばA(n+1)=3A(n)+1のときに、線形性を考えると △{A(n+1)-3A(n)-1}={A(n+2)-3A(n+1)-1}-{A(n+1)-3A(n)-1}=△A(n+1)-△A(n)-△1 となり線形性をもつます。 しかしここでまた疑問なのですがA(n+1)=A(n)^2 -2を考えると △{A(n+1)-A(n)^2 +2}={A(n+2)-A(n+1)^2 +2}-{A(n+1)-A(n)^2 +2} =△A(n+1)-△A(n)^2+△2 となりませんか? この漸化式は線形性をもつから特性方程式がつかえる・・・と思うと この問題は使えなかったりします となると上の緑色部分の変形があやしかったのでしょうか? 最後の疑問点は特性方程式の定義そのものなのですが 先生のご回答で特性方程式は固有方程式と書かれているので調べてみた ところ【斉次線形N+1項間漸化式a_{N}A_{n+N}+...+a_{0}A_{n}=0を満たす 数列のなす線形空間において、数列の項を一つずらす 線形変換{A_{n}}→{A_{n+1}}の表現行列の 固有方程式がa_{N}x^N+...+a_{0}=0 であり、これを特に特性方程式と呼ぶ。 上記の固有方程式の解(固有値)を求め、 表現行列のJordan標準形を考えれば数列の漸化式はいわば 2項間漸化式A_{n+1}=a A_{n}の"高次元版"に帰着し 等比数列のようにして一般項が求まる】と上記のように定義されておりました。 線形という学問に触れていないのでよく意味がわからないのですが 定数項がない二項間漸化式の形にもっていく(=等比数列の形)ための 手段ということですよね、、 例えば二項間漸化式A(n+1)=3A(n)+1で考えたとき参考書をみると 特性方程式はα-3α-1=0でした。 この特性方程式は固有方程式の解(固有値)を求め、 表現行列ののJordan標準形を考えた結果、生まれたと考えていいの でしょうか? またA(n+1)=3A(n)という漸化式の特性方程式はα-3αではなく α-3=0だそうですが これも固有方程式の解(固有値)を求め、表現行列のJordan標準形 を考えた結果、生まれたのでしょうか? もし↑の推測が正しければ、 固有値がわかり、Jordanの標準形という形を考えてやれば 三項間漸化式A(n+2)=3A(n+1)-2A(n)の時に、 α=3α-2αと置かずに、α^2=3α-2という式にする理由がわかりますし 線形性をもつ漸化式ならどんな場合でも特性方程式がわかるということ になりすごくドキドキしているのですが・・ またまた長くなってしまいもうしわけありません。
お返事2001/1/24
from=武田
⊿sinA(n)=sinA(n+1)-sinA(n) sin⊿A(n)=sin{A(n+1)-A(n)} とちょっと違うわけです。 ⊿[A(n+1)-{A(n)}2 +2] =⊿A(n+1)-{⊿A(n)}2 +⊿2 となれば線型性があるわけですが、残念ながら ⊿A(n+1)-⊿{A(n)}2 +⊿2 としかなりませんね。 つまり、{⊿A(n)}2 ={A(n+1)-A(n)}2 ⊿{A(n)}2 ={A(n+1)}2 -{A(n)}2 とちょっと違うわけです。 この場合も線型性を持ちませんから特性方程式はありません。 さて、ご質問の定義ですが、やけに難しい表現(正式にはこうしなけれ ばいけないのでしょうが……(×_×;))ですが、何となく理解できました。 その通りなのですね。 A(n+1)=3A(n)の場合、その特性方程式は、α=3 ∴等比数列A(n)=C・3n A(n+2)=3A(n+1)-2A(n)の特性方程式は α2 =3α-2 α2 -3α+2=0 (α-1)(α-2)=0 ∴α=1,2 したがって、 A(n)=C1・1n +C2・2n =C1+C2・2n ※残念ながら「固有値を求め、表現行列のJordan標準形を考えて」に ついては勉強不足でわかりませんが、やってみて出来たら教えて下さい。