質問<52>98/9/20
from=鈴木貴志
「2次不等式について」


2次不等式の基本的な事から全くわかりません。教えて下さい。


お返事98/9/20
from=武田


不等式を、関数のグラフと関連づけながら説明しましょう。
併せて式変形の方も付記します。

①一次関数と一次不等式の場合

「一次不等式2x+4>0を解け。」

<関数のグラフとの関連>
   2x+4>0は、一次関数y=2x+4のグラフの
   y>0にあたる。

   図より、+の部分は、x>-2のとき
   したがって、(答)x>-2

<式変形>
   2x+4>0
   両辺に(-4)を加えると、
   2x+4+(-4)>0+(-4)
   2x>-4……移項したと見る。
   両辺を2で割ると、
   (2x)/2>(-4)/2
   (答)x>-2……xの係数の2で割ると見る。

②二次関数と二次不等式の場合

「二次不等式x2+2x-3>0を解け。」

<関数のグラフとの関連>
   二次方程式x2+2x-3=0を解く。
   x=-3,1
   x2+2x-3>0は、
   二次関数y=x2+2x-3のグラフの
   y>0にあたる。

   図より、+の部分は、x<-3または1<xのとき
   したがって、(答)x<-3または1<x

<式変形>
   x2+2x-3>0を因数分解して、
   (x+3)(x-1)>0
   (i) x+3>0かつx-1>0のとき
     x>-3かつx>1
     したがって、x>1
   (ii)x+3<0かつx-1<0のとき
     x<-3かつx<1
     したがって、x<-3
   (i)(ii)より、(答)x<-3またはx>1

「二次不等式x2+2x+3>0を解け。」

<関数のグラフとの関連>
   二次方程式x2+2x+3=0を解く。
   判別式D=4-12=-8<0より、
   解なし
   x2+2x+3>0は、
   二次関数y=x2+2x+3のグラフの
   y>0にあたる。

   図より、+の部分は、xのすべての数のとき
   したがって、(答)xはすべての数

<式変形>
   x2+2x+3>0を平方完成して、
   (x+1)2+2>0
   (x+1)2≧0
   (答)xはすべての数

「二次不等式x2+2x+1≦0を解け。」

<関数のグラフとの関連>
   二次方程式x2+2x+1=0を解く。
   (x+1)2=0
   x=-1(重解)
   x2+2x+1≦0は、
   二次関数y=x2+2x+1のグラフの
   y≦0にあたる。

   図より、-の部分または0の部分は、x=-1のみ
   したがって、(答)x=-1

<式変形>
   x2+2x+1≦0を因数分解して、
   (x+1)2≦0
   (x+1)2<0は、解なし
   (x+1)2=0は、x=-1
   (答)x=-1


お便り98/10/8
from=yuki


>不等式を、関数のグラフと関連づけながら説明
>しましょう。併せて式変形の方も付記します。

ちょっと待って下さい。私はいつもこの手の解説を見て思う
のですが、関数・グラフ・方程式・不等式をはじめからごち
ゃまぜにして考えるのは大きな混乱を生じて良くないと思い
ます。

何を言いたいかといいますと、不等式を見た瞬間にそれをも
とに、意味も分からずに関数のグラフを書き出して、なんと
なく図的に解いてしまって、その本質を見失う人が大勢出て
くる可能性があるということです。

不等式は、単純に
「実数の間の大小関係を表す式」
と教えるほうがわかりやすいと思います。というのは、xは未
知“数”だと教えています。xを2倍したものもやはり数です。
そこに4を足して2x+4としてももやはりなんらかの“数”です。

ですから、
            2x+4 > 0
というのは、"2x+4"というある数が0よりも大きいのだという
ことを意味しているに過ぎません。ですから、不等式の問題
は、「この大小関係を満たすxをすべて求めなさい」というこ
とになります。

すると、大小関係では、
a > b ならば a+c > a+c (c:定数)
(同じ数を足しても、その大小関係は変わらない)が成り立
ちますから、上の式で、-4という数を足して
     2x > -4
を得ます。

さらに、不等式では、
a > b  ならば ca > cb (c:正の定数)
        ca < cb (c:負の定数)
が成り立ちますので、両辺に1/2をかけて、
     x > -2
という大小関係を得ます。すなわち、「未知数xは、-2よりも
大きい任意の実数であればよい」ことになります(これが答
えを意味します)。

つまり、小学校などで習った、あるいは日常的にもよく理解
できる大小関係(順序関係かもしれない)だけを使って、問
題の意味を解きほぐすと、関数もグラフも使わない(つまり
解析的な解法ではない)、ごく単純な代数的な解法に還元で
きます。

もし、1次不等式がはじめて出てくるのならば、一度に色々
なことを教えずに、単純に説明を還元するとよりわかりやす
くなると思います。いまの高校数学は知識をまんべんなく伝
えようとするあまりに、教科書の構成が複雑になりすぎるき
らいがあります。

関数やグラフについての知識がきちんとある人にとっては、
説明にあるような方法では、ほとんど自明(のような気がす
るだけかもしれない)ですが、そうでない人には周辺知識を
なるべく減らすように説明すべきではないでしょうか。

ちなみに、鈴木君に説明しておきますと、1次不等式というの
は、未知数xが1次(最高で1乗のものしかない)からです。
x^2(xの2乗)が最高の“次数”として含まれている不等式
なら、2次不等式といいます。

なお、ついでにあと一言だけ言っておきますと、不等式の説
明の不味さゆえに
     5 ≧ 3
が「正しい不等式」であると信じられない学生が多いようで
す。
上の不等式は「5は3より大きいか等しい(どちらか1つ成り
立てば正しい)」です。5は3より大きいですから、確かに正
しいのです。ですから、
     5 > 3 または 5 = 3
     (のどちらかが成り立てば正しい)
と言っているのを1つの記号にしてしまって、簡略化してい
るだけです。このことを注意して教えない先生は多いと思い
ます。

同じ事は、
     x≧3
にもいえます。これは、「xは3よりも大きいか等しいような
数」です。そのような条件を満たせばなんでもよいのです。
ですから、xは100でも4.0550001でも3でも良いのです。その
ような「数・たくさん」が、xそのものです。

ですが、「数・たくさん」は全部書ききれないので、上のよ
うな不等式で言い換えることができます。ですから、不等式
の解はやっぱり不等式で“表される未知数ぜんぶ”になるの
です。

なぜかしらん、x≧3は 集合 X={x∈R | x≧3} の略形式だと
大学で教わった方は多いはずなのですが、、、

以上