質問<854>2002/6/1
from=タキ
「基本対称式について」


先日は置換積分の問題についての解答をどうもありがとうございました。
疑問が解けてすごくスッキリしました。

ところで、先日数学の参考書を開いていてまた疑問が起こったのですが、

「αとβの対称式はすべてα+βとαβで表わせる」

と書いてありましたが、これは高校数学の範囲で証明することは出来るの
でしょうか?

また、これに少し似た問題で

「a,bは整数でxに関する2次方程式 x^2+ax+b=0 の2解をα、βとする
ならα^n+β^nは正の整数nに対して全て整数値をとることを証明せよ」

と、ありました。(ヒントに数学的帰納法を用いて証明するらしきことが
書いてあったのですが…)
対称式の性質を考えれば、そうなるのは当然ってことがわかるんですが、
それでは証明は不十分ですよね??
なにかきちんとした証明をする方法があるのでしょうか?
よかったらアドバイス下さいませ。


お便り2002/6/7
from=fan


αとβの対称式は、展開して整理すると、
(係数)×(αβ)^m*(α^n+β^n)と表される項の和として表されるはずです。
というわけで、α^n+β^nが基本対称式で表されるということをいえばいいと
思います。
まず、n=1,2のときはできます。
n=k,k+1のとき成立するとします。すると、n=k+2のとき、
α^(k+2)+β^(k+2)=(α+β){α^(k+1)+β^(k+1)}-αβ(α^k+β^k)
となり、これも基本対称式で表せます。
よって、α^n+β^nは基本対称式で表せ、すべての対称式は基本対称式で
表せます。


お便り2002/6/7
from=CharlieBrown


基本対称式だけで全ての対称式を書き表すことができることを
高校数学の範囲で証明します。

分数式の対称式については、
通分して一つにまとめれば、
分母・分子ともに多項式の対称式になるので、
多項式について証明すれば十分です。

n次の多項式はn次の項と、それ以下の次数の項に分け、
n次の項だけで構成される多項式(これを斉次多項式といいます)
で証明すれば十分です。
そこで、帰納法を用いて証明します。

2文字x、yの場合について証明します。
基本対称式を、
 x+y=u、xy=v
とおきます。

1次の対称多項式は、
 f1(x,y) = ax + ay
で、明らかに基本対称式uの定数倍です。

2次の対称多項式は、
 f2(x,y) = ax^2+bxy+ay^2+
と表されますが、
 x^2+y^2=u^2-2v
であるから、
 f2(x,y) = au^2+(b-2a)v
となり、u、vだけで表すことができます。

3次の対称多項式は、
 f3(x,y) = ax^3 + bx^2y + bxy^2 + ay^3
と表されますが、
 x^2y+xy^2=uv
 x^3+y^3=u^3-3(x^2y+xy^2)
        =u^3-3uv
であるから、
 f3(x,y) = au^3 + (b-3)uv
となり、やはりu、vだけで表すことができます。

4次の対称多項式は、
 f4(x,y) = ax^4 + bx^3y + cx^2y^2 + bxy^3 + ay^4と表されますが、
 x^2y^2 = v^2 x^3y+xy^3 = xy(x^2 + y^2) =v(u^2-2v)
 x^4+y^4 = (x+y)^4 - (4x^3y+6x^2y^2+4xy^3)
         = u^4 - 4(x^3y+xy^3) -6x^2y^2
で、最後の2項はすでに上でu、vで表されていますから、
複雑にはなりますが、f4もやはりu、vだけで表すことができます。
(注:帰納法の証明では2次から4次の確認は必要ありません。
   計算の例として挙げただけです。)

いま、(n-1)次の対称多項式までは定理が成り立つものとします。
n次の対称多項式は、
 f(x,y) = ax^n+bx^(n-1)y+・・・+bxy^(n-1)+ay^n
で表されます。
もし、x^py^q という項があれば、必ずx^qy^pという項もあり、
これらは同じ係数を持ちますから、
これらをセットにして考えます。
(xの次数p)≧(yの次数q)という条件で、
しらみつぶしに全てのセットを確かめます。
(4次の場合の考察を参照してみてください)

p=q のとき、セットは1項だけからなり、
 x^py^q=v^p
は明らかにvだけで表すことができます。
n>p>q>0 のとき、共通因数x^qy^qでくくると、
 x^py^q+x^qy^p = v^q{x^(p-q)+y^(p-q)}
となり、{・・・}の中は、p-q次の対称多項式なので、
仮定よりu、vだけで表されます。
n=p>q=0のとき、二項定理より、
 x^n+y^n = (x+y)^n - (x^n、y^n以外の項からなるn次の対称式)
で、後ろの項がu、vだけで表されることはすでに上で証明済みですから、
やはりu、vだけで表されます。

従って、n次の対称多項式もu、vだけで表されたことになります。

以上から、数学的帰納法により、すべての自然数nに対して、
n次の対称多項式が基本対称式だけで表されることが証明されました。


お便り2002/6/7
from=toshi


「αとβの対称式はすべてα+βとαβで表わせる」

正確な証明は概念的な部分が多いと思うので、高校の範囲で考えます。
つまり対称式はべき乗級数で表されるとする。つまり
F=∑a^m*b^(m+n)
で表されるとする。
a^m*b^(m+n)があるならばa^(m+n)*b^mもある(対称式なので)
a^m*b^(m+n)+a^(m+n)*b^m=(ab)^m*(a^n+b^n)
よってa^n+b^nがa+bとabで表せれば良い。

n=1のときたしかに適する。
n=2のときa^2+b^2=(a+b)^2-2ab より適する。
n=kで成り立つとすれば
a^(k+1)+b^(k+1)=(a^k+b^k)(a+b)-ab(a^k+b^k)よりk+1でも成り立つ。
よって数学的帰納法より題意を示した。
って感じです。

> 「a,bは整数でxに関する2次方程式 x^2+ax+b=0 の2解をα、βとする
> ならα^n+β^nは正の整数nに対して全て整数値をとることを証明せよ」
a+b,abは解と係数の関係より、高々整数しか取らない。
上の証明より、a^n+b^nはa+b,abの積や和で表される。よって全て整数値を
取る。

概念的な部分がおおいと言ったのは、基本関数は全て合成が可能なので証明
できるが合成不可能な関数(があるかもしれない)や、虚数範囲では
対称の概念などが曖昧になると思ったからです。

全てを統合して考えられる方がいたらよろしくお願いします。


お便り2002/6/8
from=d3


>「αとβの対称式はすべてα+βとαβで表わせる」
できないことはないですが,見た目はゴツイ(らしい)です.
>「a,bは整数でxに関する2次方程式 x^2+ax+b=0 の2解を
>α、βとするならα^n+β^nは正の整数nに対して,
>全て整数値をとることを証明せよ」
p[n]=α^n+β^nで定義した数列{p[n]}はつぎの漸化式をみたします.
p[n+2]+ap[n+1]+bp[n]=0
これについては確認してください.
解と係数の関係から,
p[1]=α+β=-a,
p[2]=α^2+β^2=(α+β)^2-2αβ=a^2-2b
で,ともに整数です.
いま,p[1],p[2],・・・,p[k],p[k+1](k≧1)がすべて整数だとすると,
上の漸化式から,
p[k+2]=-ap[k+1]-bp[k]
で,このp[k+2]も整数といえます.
以上から数学的帰納法から数列{p[n]}のすべての項について成り立ちます.