質問<3834>2012/9/29
from=ryo0210
「確率変数と確率密度関数」


確率変数Xの確率密度関数P(x)を次で定める。 
P(x)= 1/2(x+1) (-1≦x≦1)
    0 (x<-1、1<x)
このとき、次の(1)~(3)について答えよ。
(1) Xの分布関数F(x)を求めよ。
(2) U=2X+3の確率密度関数g(x)および分布関数G(x)を求めよ。
(3) V=X^2の確率密度関数h(x)および分布関数H(x)を求めよ。
という問題なのですが、(1)と(2)の問題は解けたのですが、(3)がわかりません。
P(x^2≦V)=P(-√V≦x≦√V)というように変換すれば良いのはわかるのですが、
“-√V≦x”の部分をどのようにすれば良いか分かりません。
その部分を詳しく説明しながら解答していただけるとありがたいです。
よろしくお願いします。

★希望★完全解答★

お便り2012/10/4
from=平 昭


 ryo0210さん、こんにちは。頂いた質問のように「自分の考えはこうだが、ここが分からない」
と書いて頂けると、説明しやすくて好感が持てます(^^)。

 ただ、この質問は記号の使い方が混乱しているようです。

 というのも、問題文の最初に出てくる「確率密度関数P(x)」で使われているP(x)と、ryo0210さん
が付け加えた「P(x2≦V)=P(-√V≦x≦√V)というように変換すれば良いのはわかる」という文章
でのP(x)は、意味が違うようですから。

 問題文に出てくるPは、あくまで「確率密度」であって、確率ではありません。「Xの分布関数
F(x)」はつまり「確率変数Xの値がx以下となる確率」を意味しますが、Pは確率とは異なります。
(念のため確認しておけば、Fは確率ですから、値が1を超えることはありませんが、Pの値は1を
超えても問題ありません)

 これに対して、ryo0210さんが書かれた「P(x2≦V)」はおそらく「x2がV以下の値を取る確率」の
つもりでしょう。

 ここでさらに、確率密度変数を表す大文字のX、U、Vと、その値を表す小文字のxの使い方も
混乱しているようです。

 問(3)で求めたいH(x)は「V≦xとなる確率」ですし、h(x)は「確率変数Vの、V=xにおけ
る確率密度」ですね。
 単に書き方が悪いだけなら書き直せば問題ありませんが、「確率変数」「確率密度関数」「分布
関数」という三つの言葉それぞれの定義を誤解しているのではないかな、と心配になります。教科
書の定義をゆっくり読んで考え直して頂く方がよいかもしれません。

 さて、以上のことを踏まえて、問題を解いてみます

(1) Xの分布関数F(x)を求めよ。

 分布関数と確率密度関数の定義から
F(x)=∫[-∞→x]P(a) daである。

この定積分を、与えられたPに基づいて計算すれば

F(x)=0      (x<-1)、
    =( x+1)^2/4  (-1≦x≦1)
    =1      (1<x)


(2) 解けたということなので省略します。

(3) V=X^2の確率密度関数h(x)および分布関数H(x)を求めよ。
 確率変数Xの値がa≦X≦bとなる確率を「率(a≦X≦b)」と書くことにする。(この確率は
普通、文字Pで表すのですが、今回は確率密度関数でPを使っているので、この解答限定で特別に
「率」という記号を使います)
 すると

 H(x)
=率(V=X^2≦x)
=率(-√x≦X≦√x)
=率(X≦√x)-率(X≦-√x)  
(ここがポイント。分布関数から特定区間の確率を計算する時の基本です)
=F(√x)-F(-√x)

 そして、0≦x≦1の時、問(1)の結果から

 F(√x)-F(-√x)
={( √x+1)^2-( -√x+1)^2}/4  
=√x

 また、-1≦X≦1だから、0≦V=X^2≦1で、これから

x≦0の時、H(x)=0
1≦xの時、H(x)=1

は明らか。まとめると

 H(x)=1 (1<x)
     =√x (0≦x≦1)
     =0 (x<0)

そして、h(x)=dH(x)/dxだから

h(x)=0 (1≦x)
    =1/2√x (0<x<1)
    =0 (x<0)

なお、Hはx=0で微分不能で、h(0)は定義できない。


これで問題が解けました。
 なお、H(x)を求める前に、
h(x)を求めようとすると次のようになります。

 h(x)dx
=率(x≦V=X^2≦x+dx)
=率(-√(x+dx)≦X≦-√x)+率(√x≦X≦√(x+dx))

ここで、率( )のかっこの中に√(x+dx)が入ってくること、また、率を求める区間が2カ所に分
かれることがポイントです。

 そして
√(x+dx)=√x・√(1+dx/x) と書ける。

ここで、2次の微少量を無視すると

√(1+dx/x)=1+dx/2x なので、結局
 率(√x≦X≦√(x+dx))
=率(√x≦X≦√x+(√x/2x	)dx)
=率(√x≦X≦√x+(1/2√x	)dx)

=P(√x)dx/2√x

 ←区間の幅が1/2√xになっているので確率も1/2√xになりますね。

同様に
 率(-√(x+dx)≦X≦-√x)
=率(-√x-(1/2√x	)dx≦X≦-√x)
=P(-√x)dx/2√x


 まとめると
 h(x)dx
=率(-√x≦X≦-√(x+dx))+率(√x≦X≦√(x+dx))
=(P(√x)dx+P(-√x)dx)/2√x

となり、計算すれば先ほどと同様に

h(x)=0     (1≦x)
    =1/2√x (0<x<1)
    =0     (x<0)

となります。